新幹線に「北海道らしさ」がないのはナゼ? 東北新幹線の延伸と見紛う愛称、デザイン…

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新函館駅の駅名標。緑から萌黄色へのグラデーションが、北海道新幹線の案内標識類に採用されている

しかし、苦境にあるJR北海道だからこそ、「北海道」のアイデンティティを、東京でもっとアピールしてもよかったのではないかと思う。事故の頻発などから批判を浴びて萎縮し、何となくJR東日本に追随している雰囲気がJR北海道にはある。

E5系の上半分の塗色はJR東日本のコーポレートカラーをイメージした常盤グリーンで、H5系もそれを踏襲した。しかし「萌黄色(JR北海道のコーポレートカラー)の新幹線」だったらもっと楽しかろうし、たまにしか見られない(H5系は10両編成4本しかない)希少性から、話題になったに違いない。新函館北斗でE5系とH5系が並んだシーンも見たが、正直、区別をつけにくかった。

愛称も、やはり新函館北斗発着列車は別のものを採用すべきであっただろう。東北新幹線のイメージがついた「はやぶさ」「はやて」が新函館北斗に姿を現しても感激は薄い。例えば「はつかり」など、伝統ある愛称を復活させてもよかった。列車や駅の表示は、今やフルカラーLED式が当たり前である。愛称の変更など簡単にできるはずなのに、惜しいことをしたという思いの方が先に立つ。

もっと欲しい「北海道らしさ」

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入場券を求める長い列ができている、開業当日の新函館北斗駅「コンコース」。デザインはシンプル

こうしたこともあって、開業日に新函館北斗駅に立っても、私としては「北海道初の、新しい新幹線である」という感激より、「東北新幹線が北海道まで延びてきた」という感覚のほうが強かった。

北海道らしさ、目新しさが、さほど感じられなかったのだ。駅名標のデザインにも、JR東日本のシンボルカラーである緑から、JR北海道のシンボルカラーである萌黄色へのグラデーションが施されているほどだ。

「北海道らしさ」とは何か?と問われると、答えはなかなか難しいが、少なくとも、鉄道をイメージづける大きな要素である駅と列車からは、JR北海道の個性が感じにくいのである。

新函館北斗駅は思っていたより簡素な作りで、ホームはむきだしの鉄骨が目立った。寒冷地だけに、冬季、寒々とした印象を与えはしまいか。

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JR北海道と北斗市のマークが並ぶ新函館北斗駅舎。ガラス張りになったフロアからの周囲の眺めはよい

駅舎内は天井を木張りにするなど工夫はされていたが、九州新幹線や北陸新幹線の各駅にて、趣向を凝らしたデザインが競作であるかのように施されていたことを思い出し、それと比べてみると少々寂しい。なおこの駅舎内には、JRの駅と北斗市観光交流センターが併設されており、外壁にも両者の名称が併記されている。

ただ、評価できるところもあった。駅舎の随所がガラス張りになっており、高原の雰囲気がある駅周囲の雄大な景色が存分に眺められるところだ。新函館北斗駅は台地上にあり、見晴らしがよい。周囲は開発途上で、北口側には水田が広がる。函館付近はまだ、北海道の入口にすぎないとはいえ、本州以南とはスケールが違うことが体感できよう。

1988年の青函連絡船廃止、青函トンネル開業以来、「北海道へ渡る感動」が薄れたとも言われる。今や東京から4時間あまりで北海道へ着いてしまうが、せめて感激だけは昔のままであってほしいものだ。

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