北海道新幹線、開業日に乗って分かったこと 車内や駅はお祭り騒ぎだが、今後に不安も…

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乗客や見学者でごった返す新函館北斗駅

列車が本州最北端の新幹線駅、奥津軽いまべつ駅を通過すると「この先大小7つのトンネルを抜け、青函トンネルへ進んでまいります」との車掌の案内放送が入った。

列車は10時25分過ぎに青函トンネルへと突入。気温が約20度、湿度は90%という環境だけに窓が一瞬にして曇る。海底下のトンネルを抜けると、車窓には北の大地が広がり、「北海道だ…」とつぶやく乗客の姿が見られた。

「はやぶさ47号」は定刻通り11時16分、終点の新函館北斗駅に到着。駅はほぼ満席の新幹線から吐き出される乗客はもちろんのこと、見学の地元住民らも多数訪れ、帰省シーズンのターミナル駅を思わせるほどの混雑ぶりだ。乗客や見学者の誘導にあたっていた北斗市役所の職員は「きょうと明日は職員総出です」と、忙しそうに動きながらも笑顔を見せた。

駅が函館市中心部から離れていることや、高額な料金が開業前からネックとして指摘されていた北海道新幹線だが、地元で感じられる空気は圧倒的に歓迎ムードだ。

娘2人、孫2人と見学に訪れたという地元・北斗市の女性は「亡くなった父が新幹線の開業にずっと期待していたので、本当に楽しみだった。この日を迎えられてうれしい」と語る。駅コンコースで来場者の整理にあたっていた地元の関係者も「駅周辺は何もないところだが、この開業を前向きに捉えてやっていきたい」と今後に期待を寄せる。

この賑わいが続いてくれれば…

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新函館北斗駅に貼られた、駅員の手描きイラストとメッセージ

だが、JR北海道が今月上旬に発表した開業から9日間の予約率は約25%。在来線時代よりも座席数が増えているため、乗客数自体は増加している計算だが、低調であることは間違いない。昨年12月に発表した収支想定では年間48億円の損失が生じることになっており、先行きは決して明るくない。

開業前日の3月25日に発表された、北海道新幹線の「貸付料」も異例の内容だった。北海道新幹線を含む「整備新幹線」は、施設を建設した鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)からJRが借り受けて運行する形になっており、その使用料としてJRが鉄道・運輸機構に支払うのが「貸付料」だ。

北海道新幹線の貸付料は年額1億1400万円となったが、このほかにJR東日本も年額22億円を支払う。北海道新幹線の開業によってJR東日本にも受益が生じるためだが、実際に北海道新幹線の運行を行うJR北海道以外の会社が貸付料を支払うのは実質的な「救済」ともとれ、先行きの厳しさが浮かび上がる。

「もともと駅の周りは何もないところだし、函館市内までだと(新函館北斗駅は)空港より遠い。新幹線には期待しているし賑わいが続けばいいけど、乗る人がどれくらいいるかだね」。開業に沸く駅の見学へと向かう車列を見ながら、タクシーの運転手はそう語った。

整備計画の正式決定以来40年超。北の大地へ乗り入れた北海道新幹線は、期待と不安の両方を乗せていよいよ走りはじめた。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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