「リンガー」「ハチバン」統合交渉決裂の真相

ちゃんぽんとラーメン、どこで溝が生じたか

リンガーとハチバンの議論では、取締役の数などで食い違いも見られた(撮影:今井康一)

ただ、経営スタイルの違いは、提携開始のときからわかっていたことだ。それを克服できなかったのには別の要素がある。この2年間で、両社の経営統合熱を冷ましたもう一つの理由は、皮肉にも両社の業績好転だった。

特にハチバンは北陸新幹線の開通効果で客足が想定を上回り急増。業績の上方修正も発表し、2016年3月期は過去最高純益になる見通しだ。リンガーも人件費負担が下がるフードコート店の出店を加速させ、2016年2月期の営業利益率は7%台(前期5%台)に大きく引き上がりそうだ。

そもそも「経営統合はエネルギーを使う」(ハチバン幹部)もの。2年間の試行錯誤で当初想定したシナジーが得られにくいのなら、経営統合という選択肢をいったん棚上げし、お互いに地力をもっと蓄えてから次を考えてもいいのではないか。そんな経営判断に両社が傾いたようだ。

2016年3月18日に行われた最後の統合交渉は「決してケンカ別れに終わったわけではない」(両社幹部)という。午前10時から2時間に渡った両社の話し合いは、厳しい結論に至った割には、終始友好的に話が進んだ。統合会社の取締役について、同数にしたいハチバン側と経営規模に合わせるべきだと主張するリンガー側で、意見の食い違いも見られたが、創業家間の信頼関係が傷つくほどには至っていない。今後も物流網の相互活用や外販事業は協力を続けていくという。

市場はハチバンに厳しい評価

しかし、今後の成長戦略については、両社それぞれに練り直しが迫られる。ハチバンは新幹線効果による客足増もピークを過ぎ、2017年3月期の利益貢献にはあまり期待できない。今後は年間純増3店舗程度のペースでの新規出店と、客足急増で止めていた既存店のリニューアル再開が喫緊の課題である。

中でも東京進出は悲願だ。1~2年以内にフードコート店を軸に出店を目指す意向だ。当面は他社との経営統合は考えず、オーガニックグロース(自社グループ内の成長)に力点を置く。ただ、統合解消発表直後の3月22日の株価を見ると、前週末比25円高(1.03%上昇)となったリンガーに対し、ハチバンは同20円安(3.31%下落)と冴えない値動きになった。統合への期待感剥落による失望売りとみられる。その後、株価は戻ってきたが、市場はハチバンの新たな戦略構築を駆り立てており、決して安閑としてはいられない。

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