日本初登場!「レストランバス」に乗ってみた "味な試み"はこの国の乗り物旅を変えるか

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バス車内での調理風景

「農家で調達した食材をバス車内で調理して食べることもできる。これまでのバスではできなかった楽しみ方だ」と、ウィラー・アライアンスの村瀬茂高社長は胸を張る。

これまでのバス旅における車内の食事といえば、ドライブインで買った弁当を食べるのが関の山。採れたて、作りたてのほかほか状態で食事ができる、新しい楽しみ方である。

「とりあえず3カ月間、新潟県内を走り、その後は全国各地で展開する」(村瀬社長)。運行予定のない日は企業などの貸切バスとして運行することも考えているという。レストランバスは当面1台のみだが、「当社には同タイプのバスが7台あるので、もし人気が出れば2台目、3代目と展開することも可能だ」(同)。

レストランバスで挑む「2つの試み」

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2階の客席は開放感たっぷり

最近は豪華な食事を売りにした列車が全国で増えているが、その多くは食事を外から持ち込んでいる。車内で調理するのは手間もコストもかかるし、保健所の許可が必要だ。

このため、豪華寝台列車「カシオペア」が3月に引退してしまうと、厨房付きの列車は「ななつ星」「東北エモーション」など、ごくわずかとなってしまう。

ウィラーグループの鉄道会社、ウィラー・トレインズ(愛称は京都丹後鉄道)の食堂列車「丹後くろまつ号」にも厨房はない。ただ、「食へのこだわりはバスも鉄道も同じ」(村瀬社長)。

丹後くろまつ号では、4月から食材提供者や調理人が、食材や料理に秘められた歴史や文化について語った映像を流し、調理の最終工程を乗客の目の前で披露するという演出を取り入れる。「食べる」という行為から一歩進んで、食の魅力を体験してもらう試みだ。

村瀬社長の考えていることが、もう1つある。食事やイベントを売りにする列車、あるいは列車そのものを魅力とする列車が全国に増えているが、肝心なアテンダントのおもてなしに不備があることが少なくない。

料理を出した後は同僚とおしゃべりしていたり、質問すると「わかりません」と不機嫌そうに答えるアテンダントもいる。車両や食事、イベントのよさがアテンダントの対応ひとつで台無しになってしまう。

この点に関して、村瀬社長は「ホテルのようなおもてなしは難しい」と打ち明ける。その代わりに「乗り合わせたお客様同士が盛り上がるような仕掛けを考えていきたい」。

4月からスタートするレストランバスでは、こんな試みも考えている。アテンダントが乗客1人1人にお酒をついで回るのではなく、一升瓶を渡して、乗客同士で回し飲みしてもらう。そうすれば、見知らぬ乗客の間に会話が生まれる。「場を盛り上げる工夫をアテンダントがしてくれれば」(同)。バスの成功体験が鉄道に取り入れられると、鉄旅もさらに面白くなるに違いない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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