大日本住友製薬が米セプラコール社にTOB、海外展開に乗り出す

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大日本住友製薬が米セプラコール社にTOB、海外展開に乗り出す

製薬業界準大手の大日本住友製薬は、米国ナスダック上場の製薬会社・セプラコールを約2500億円で買収する。同買収によって世界展開への足場を固めることになった。

3日に行われた記者会見で、大日本住友製薬の多田正世社長は「(米国で開発中の)統合失調症治療薬ルラシドンの販売体制の構築」を買収理由の第一に上げ、「独自での販売網構築などの負担を考えると、ルラシドンのポテンシャルを最大限に発揮できる方法」と述べた。

買収するセプラコール社は1984年に設立された中枢神経領域、呼吸器領域などに特化した製薬会社。2008年12月期の売上高は12億9200万ドル(約1200億円)、営業利益は5900万ドル(約54億円)。買収は株式公開買付(TOB)によりセプラコール社の発行済み普通株式を総額約26億ドル(1株あたり23ドル)で取得する。TOBに必要な2500億円のうち、500億円は自己資金、2000億円はブリッジローン(つなぎ融資)により、調達する。

TOBが成功すれば、大日本住友製薬の売上高は単純合算で3840億円となり、国内では田辺三菱製薬(4147億円)に次ぐ売上高規模となる。海外売上高比率も、これまでの、ほぼゼロから4割へと上昇する。

損益への影響について、のれん償却やインプロセス(仕掛かり中の)R&Dなど無形資産などについての詳細は、今後確定次第公表する、としている。

大日本住友製薬はこれまで、自社の中長期的ビジョンとして「グローバルレベルで戦える研究開発型企業」「国内・海外事業の収益2本柱体制」を掲げてきた。加えて、現在米国などグローバルな治験を実施中の「ルラシドン」を武器に、海外展開の足掛かりをつかもうと、体制づくりに努力してきた背景もある。

「ルラシドン」は2010年初めに承認申請を米国で行う予定。そのためにも、米国での販売体制をどう構築していくかが喫緊の課題で、これまでも多田社長は「自社、提携、M&Aのすべてを視野に入れて検討中」と述べてきた。

一方で、医療費抑制をはじめ国内市場のシュリンク状態は今後も続く。また、これまで大日本住友製薬の収益を牽引してきた主力4製品のうち、稼ぎ頭の高血圧症治療薬「アムロジン」が特許切れ。他3製品も特許切れを早晩迎え、その対策に頭を痛めてきた経緯もある。

それらを考えると、「日本の統合失調症薬の市場規模は1200億円。米国は統合失調症と双極性障害(躁鬱病)合わせると8000億円。米国に出ることは必然的」(多田社長)というほど、海外展開は国内製薬企業にとっても当然の選択となっているのが現状なのだ。


《東洋経済・最新業績予想》
 (百万円)    売 上  営業利益   経常利益  当期利益
連本2009.03      264,037     31,166     31,395     19,987
連本2010.03予     264,000     25,000     24,000     15,000
連本2011.03予     270,000     28,000     28,000     18,000
連中2008.09      134,358     18,177     18,208     10,870
連中2009.09予     130,600     12,800     12,400      7,800
-----------------------------------------------------------
          1株益\    1株配\
連本2009.03         50.3         18 
連本2010.03予        37.8         18 
連本2011.03予        45.3         18 
連中2008.09         27.4          9 
連中2009.09予        19.6          9 
福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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