近畿日本ツーリスト、"弱気"経営計画の課題 5年後でも現状の利益水準を超えられず

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その背景には2015年度の決算が良すぎたという側面もある。赤字が続いている個人旅行事業は高付加価値ツアーの強化というテコ入れが効き、採算が改善。さらに天候不順や災害の影響が少なかったことに加えて、2014年度にのれんを減損したことも利益を押し上げた。

今期の見通しはどうか。決算期を変更するため、今2016年3月期は国内が3カ月、海外が6カ月の変則決算となる。中期経営計画によれば、12カ月決算に復帰する2017年3月期(2016年度)は売上高4318億円、営業利益は40億円を見込んでいるもようだ。

2016年度以降の収益が伸び悩む理由について、会社側は「費用を積極的に投入するため」(IR担当者)と説明する。クラブツーリズムでは控えていた新聞やテレビ広告を積極的に投入するほか、グループのシステム関連投資も増やす。採用や営業拠点の拡大も費用増要因と説明している。

ただ、会社の中計は保守的であり、それほど悲観的になる必要はないかもしれない。赤字が続いた近畿日本ツーリストの個人旅行部門は、クラブツーリズムのノウハウを活用したテーマ性の高い旅行を増やすことで採算が改善傾向にある。

狙うは東京五輪の指定旅行会社

KNT-CTホールディングスの利益の大部分を稼ぐのはバスツアーに強い、クラブツーリズムだ

団体旅行では東京五輪に照準を定める。同社はスポーツツーリズムに力を入れており、今年のリオデジャネイロ五輪の選手団や観戦者向けの指定旅行会社のひとつとなっている。

同社は東京五輪の指定旅行会社も狙っている。海外からの大会参加者や観戦者のツアーを受託できれば、その規模は小さくない。同社は2020年度に200億円の取扱高を目指している。五輪関連で弾みがつけば、その後も受託に弾みがつきそうだ。

もうひとつは2006年度以来の悲願となっていた復配だ。会社は資本準備金を取り崩し、繰越利益剰余金の赤字を一掃。「いつでもできる体制にした。早く復配したい」と同社首脳も意気込みを語っている。3カ月変則決算の2016年3月期は閑散で赤字に沈むが、2017年3月期には復配を実施する可能性が濃厚だ。

超弱気な中期経営計画が発表されても、持ち株会社であるKNT-CTの株価は160~170円台でほとんど変化はない。昨年10月につけた297円という最高値からすれば半値近い水準だ。

KNT-CTの株主総会は3月30日。はたして経営陣は、株主にどういった説明をするのか。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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