赤字転落に社長交代、IHIに何が起きたのか 最高益予想から3度も下方修正、ついに赤字へ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

それに伴い、後続の船体建造にも影響が及び、追加費用がかさんだ。また、2015年3月に発生したトルコの吊り橋建設工事事故に伴う補修費用も、想定以上に増えた。

さらに、インドネシアの工場では、ボイラーの溶接材料を取り違えるミスが発生。4件の火力発電所向け工事をやり直すほか、遅延賠償金請求に備えて多額の費用を積んだ。

ものづくり力の低下に危機感

総合重機業界で下方修正が相次ぐ中でも、IHIの下げ振りは目立つ(撮影:今井康一)

斎藤社長は2月の交代会見で、「業績下振れの共通要因はものづくり力の低下」だと自己分析し、ダメ押しとなったボイラー溶接ミスについては「考えられない事態」と、危機感をあらわにした。

今回の交代は「引責ではない」と否定したうえで、今後の社長交代に合わせ、製造体制全般を見直す専門部署を設置し、自ら陣頭指揮を執ることを明らかにした。

大和証券の田井宏介チーフアナリストは「IHIの技術力は劣っていないが、受注や管理の仕方に問題があるのではないか」と指摘する。成長を急ぐあまりに大型受注を優先したり、余裕のない工程管理で現場に過度な負担がかかったりしなかったか。

斎藤社長は「ものづくり力は営業、設計まで含む」と説明し、満岡次期社長も「企業体質を変える」と強調。具体策は示されていないが、事業戦略を含めて抜本的な見直しを進めることを示唆した。

3度の下方修正を経て、IHIの株価は、3年前のアベノミクス相場が始まる頃の水準まで急落した。投資家の信頼は大きく揺らいでいる。

満岡氏、斎藤氏は、共に航空エンジン事業の出身。2頭体制に求められるのは、迅速な対応と信頼を取り戻すための実績作りだ。「空」以外の事業にどこまで踏み込めるかがカギとなる。

「週刊東洋経済」2016年3月12日号<7日発売>「核心リポート05」を転載)

山本 直樹 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまもと なおき / Naoki Yamamoto

『オール投資』、『会社四季報』などを経て、現在は『週刊東洋経済』編集部。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事