--2000年に3行統合でみずほホールディングスが設立されました。統合が決定的であると知ったとき、どんなお気持ちでしたか。
興銀に一生勤めるつもりは最初からありませんでしたが、この時に辞めなければいけないなと思いました。同じ金融グループの中に普通銀行が別法人で2行あることにものすごく違和感があり、無駄だと思いましたね。法人格が違うと資金調達もリスク分散も別々にやらなければいけないので、余計なコストがかかります。
もちろん子どもじゃないので統合の理念は理解できましたが、自分の時間軸と合わなかったんですね。当時28歳。ものすごく仕事をしようと思っていた30~40代の大半を、余計な業務をしなければならない環境で過ごす可能性があることが、時間消費の仕方として納得がいかなかったんです。
--後のキャリアに影響を与えた印象的な経験などはありますか。
みずほホールディングスにいるとき、行内格付けの仕組作りを行う案件の実行責任者をやりました。20代後半で年上の人を40名ほど実質的にマネジメントし、外注も束ねていました。いろいろな方がいらっしゃいましたが、いかにやる気になってもらえるかということを考えましたね。
この時です。売上高10億円以上の企業10万社ほどのバランスシートを10年分チェックできる仕組みを作ったんです。結果として、当時金融機関にいた人間の中でも、もっとも多くのバランスシートを見たのではないかと思います。おかげで、ある種の数字感覚が身に付きました。
今でも部下が作ったデータなど、すぐにおかしな数字に目がいきます。若いときにルーティン的に見えるようなことを、地味で嫌でも集中的かつ大量にこなすと、職人芸的なスキルが身につくように思います。
--3行統合の翌年の2001年、なぜ金融系ではないインターネット総合研究所(以下、IRI)に転職されたのでしょうか。
大学在学中から触れていたインターネットの世界も見ておきたかったし、外資系金融機関からのオファーレターもあったのですが、ちょっと違うなと。たまたまIRIにいた親友から声がかかったのがきっかけです。