混乱が際立つ郵政民営化問題、与野党は責任ある対応を
たとえば、「かんぽの宿」問題から派生的に、西川善文社長の出身母体である三井住友銀行からの人材派遣が好ましくないという話になった。結局、同銀行から派遣された複数の人材は出身母体に戻される。
しかし、である。日本郵政グループに人材を送り込んでいるのは三井住友銀行だけではない。他のメガバンクからも派遣されているし、業種別に見ていくと、信託銀行、生損保、不動産、商社、流通等々、数多くの企業から日本郵政グループに人材が派遣されている。
日本郵政グループが民間企業として新たなビジネスを開始し、民間企業としてふさわしい体制を構築するために、外部の人材を活用するのは何も不思議なことではないだろう。
ところが、今回、三井住友銀行出身者の“強制送還”が決定したことによって、これまで人材を派遣してきた他の企業の中にも急速に不安感が募り始めている。たとえば、ある企業の役員はこう心境を漏らす。
「当社も、社員を派遣し続けていると、政治の世界から問題視されかねない」
人材派遣が自社の政治的なリスクになるという懸念である。より現実的な懸念を示す企業もある。
「今後、事業提携や入札ということがあった場合、人材を送り込んでいることが癒着と批判されて、マイナスになるだろう」
こう指摘する企業は、派遣した人材の引き揚げを内定している。当然の判断である。今後、こうした動きが拡大し、日本郵政グループから外部の人材が次々に流出するおそれは高い。その場合、民営化に向けた日本郵政グループの内部体制が動揺し、機能不全に陥ることも否めない。