CoCoやハイイールド市場には警戒が必要 HSBC運用会社のクレジット専門家に聞く

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Rick Deutsh 2010年HSBCグローバル・アセット・マネジメントにクレジット・リサーチのグローバル・ヘッドとして入社、現在に至る。1986年以 降、クレジット・リサーチに従事、メリルリンチ、BNPパリバなどに勤務。ヴァッサー大学卒業後、プリンストン大学にて修士号取得

――ドイツ銀行のCoCo債に注目が集まりました。

CoCo債はかなり複雑な仕組みの商品で、アナリストですら理解しづらいほど。しかし、CoCo債全体が悪いわけではなく、商品の仕組みそれ自体はしっかりしている。複雑な商品ゆえに、誤解が生じやすく、売りにつながりやすいのだと思う。

今回の混乱はドイツ銀行がきっかけになったが、これを機にようやくというか初めて、株式アナリストもCoCo債というものに目を向け始めた。以前、株式アナリストはバランスシートを見るが、CoCo債を見ていなかった。いまほとんどの株式アナリストは、何が何だかわからなくて当惑している状況だと思う。

編集部注)CoCo債(Contingent Convertible Bond)は資本と負債の中間的な位置付けのもので、シニア債よりも支払い順位が劣後する。資本が足りなくなくなってくると利払いが停止されたり、さらに資本が一定程度毀損されてくると元本が減ったり、株式に転換されたりするという条件が付されている。リーマンショック後に、株主だけでなく債権者にも負担してもらい、納税者負担を回避しようという考えのもとに導入された。

CoCo債は一つデフォルトすると全体へ波及

――CoCo債はそもそも、金融危機後に金融システムや金融機関の経営を安定させるために導入されました。CoCo債を導入して良かったのでしょうか。

たしかにCoCo債の仕組みは複雑すぎると思っている。中国のほか、主に欧州で発行されている。欧州は各国それぞれ制度や規制の状況が異なり、それを全体的にまとめる規制制度をつくるには、どうしても規制が複雑にならざるを得ない。投資銀行は常にクリエイティブな存在で、規制を満たす商品をつくる。それが現在のCoCo債につながっている。

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