大統領選で変わる? アメリカの対中政策
中国に歩み寄るアメリカ
こうした米中関係は、歴史的に見ても誰がアメリカ大統領かに就任するかによって大きく変わります。例えばブッシュ大統領は中国を「戦略的競争相手」と定義しました。これはクリントン大統領が中国を「戦略的パートナー」と定義したことと逆行する姿勢です。しかし前述したような中国のアメリカへの歩み寄りや、共和党が負けた中間選挙の結果から見ると、中国との関係も変わってきています。次期大統領候補の対中国外交・アジア外交の発言についても注意深く見る必要があります。
JETROが主催するセミナーで慶応大学の神保謙氏が興味深い発言をしていました。「2005年にゼーリック国務副長官(当時)が中国を“責任あるステークホルダー”と定義づけ、中国を国際システムに取り込み、ルールに則った振る舞いをさせることが基本線となってきた。だが現状のワシントンでの雰囲気はもう一歩進み、中国を(国際ルール策定の)インサイダーとすることを前提とするように変わってきた」というのです。
この動きの一つが、米中戦略経済対話(SED)です。SEDの設置は、中国通のポールソン氏の財務長官への登用と関係があり、アメリカの中国との歩み寄りを示す典型例だと私は考えています。特に2007年5月に開催された第2回SEDでは、アメリカは金融面で中国の譲歩を引き出し、また航空分野においてもサービスの自由化などを進めました。中国は過去にも、巨大化する対米貿易黒字の見返りとしてボーイング、マイクロソフトなどへ高額な発注を行ってきましたが、こうしたやりとりは90年代の日米関係に似てきたと思うのは私だけでしょうか。
中国工商銀行の香港・上海市場上場の際、米ゴールドマン・サックスが上場作業を請け負い、9億ドル以上の利益を上げました。これも90年代後半から2000年代前半にわが国金融がアメリカ資本に買い取られたことを想起させます。アメリカの資本がどんどんと中国に近くなっているのです。
中国の外貨準備の運用先には、アメリカのファンド、ブラックストーンが選ばれました。中国は同社に、議決権放棄といった大きな譲歩も行っています。日本人の目から見れば利権臭い感じもしますが、実際のところは分かりません。ただ、私はこれを中国の「ドル離れをしない」という宣言なのではないかと見ています。さらに勘ぐれば、「ブラックストーンが日系企業、特にハイテク企業を買収するのではないか」という危惧もしています。アメリカ系ファンドであるブラックストーンが日本企業を買収することは、わが国の外為法では認められるのでしょうか。この点は是非とも国会で議論していくつもりです。
藤末健三●ふじすえ けんぞう
民主党参議院議員。1964年熊本県生まれ。東京工業大学卒業後、通産省(現・経産省)に入省。マサチューセッツ工科大学大学院、ハーバード大学大学院を修了。99年、東京工業大学で博士号取得。東京大学講師、助教授を経て04年参院選初当選。
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