生命進化の歴史は地球の環境から読み解ける 生物はどのように誕生したのか
スノーボールアース現象、今はもう仮説ではなくて現象だ、がその典型例である。地球はこれまで二度の全球凍結を経験している。一度目は、光合成をする細菌であるシアノバクテリウムが全盛をきわめたことによる。二酸化炭素の濃度は酸素と逆相関するのだが、大量のシアノバクテリウムが酸素を大気中にはき出し続けた結果、二酸化炭素が減少し、温暖化と逆の働きによって凍結してしまったのだ。酸素恐るべし。
そして二度目の全球凍結は、地球の自転軸が大きく動いた「真の極移動」が原因だった。どちらの全球凍結も、斉一説的な考え方からは理解できない環境の激変をもたらし、生物の大絶滅を引き起こした。そして、それが終わった時、大進化がもたらされた。
岡本太郎も真っ青なカンブリア爆発
生命の歴史における大きな出来事は、生命の誕生、生命の酸素への適応、真核生物の登場、そして、カンブリア爆発である。分類学では、下から順に、種、属、科、目、門、界となっていて、動物界には32の門がある。カンブリア紀は、32門すべてが出現しただけでなく、5億3000万年前から5億2000万年前という「わずか」1000万年の間にそのほとんどが登場したのだから、岡本太郎も真っ青の爆発だ。
カンブリア爆発も「真の極移動」によって生じたと考えられている。その極移動では、メタンをため込んだ海底や永久凍土ー メタンハイドレート ーが、高緯度から赤道に向かって移動し、温室効果ガスであるメタンが大気中に放出されて温暖化が生じた。その結果、進化や種の多様性が爆発的に進んだのである。分子生物学的な解析から、進化に必要な「遺伝子の道具箱」はその5000万年前には備わっていたことがわかっている。しかし、進化の環境が整ったカンブリア紀になって、ようやく「遺伝子の道具箱」が使われ、爆発的な進化が生じたということなのである。
言うまでもなく、生命の歴史における最大の出来事は生命の誕生だ。しかし、それについてはいくつもの学説が存在している。ということは、残念ながら、どの学説もが不十分であるということに他ならない。有力かつ有名なのは、海底の熱水噴出孔を生命誕生の候補地とする説だが、原始生命の遺伝情報を担っていたはずの核酸であるRNAが高温では不安定なことから、この説をすんなり受け入れることはできないという。
そして、生命の起源は火星ではないかという説が紹介される。荒唐無稽な考えのように思えるが、これまでのエビデンスから、まったく不思議ではないという。はたして、どちらが正しいのか、それとも、どちらも間違えているのか、はわからない。かなり複雑な議論ではあるが、同じくらい正しそうな対立する学説を聞くのは、なんともスリリングな知的冒険だ。
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