新幹線の「トロリ線」張り替え作業に密着した 安全のかなめ「架線交換」を初めて昼間に取材

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トロリ線の磨耗の具合を調べる方法は、一つは「ドクターイエロー」での点検だ。正式には「新幹線電気軌道総合試験車」と呼ばれるドクターイエローは、レーザーの照射によって走りながらトロリ線の直径を調べることができる。トロリ線の交換は直径を基準にしているため、このデータによってどの区間が交換の時期に近づいているかがわかる。

また、最近はトロリ線自体が磨耗の具合を知らせる「磨耗検知システム」も導入されている。トロリ線の中に検知用の線が埋め込んであり、磨耗によってこの線が露出すると自動的に検出されるという仕組みだ。この検知用の線を埋め込んだトロリ線は1996年から導入されており、現在では本線はすべてこのタイプになっているという。

2トンの力でストレッチ!

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延ばしたトロリ線は2トンの力をかけて、延びきるまで延ばす

トロリ線は、ただドラムから引き延ばしただけですぐに張り替えられるわけではない。トロリ線をピンと張るためにかけるテンションは約1トン。

手で持ってみるととても簡単に曲げられるようなものではなく、「線」というよりは「棒」のようなトロリ線だが、ドラムから引き出したままの状態ではまだ延びる余地がある。そのまま1トンの力をかけて張ると、次第に延びてしまうのだ。

そこで、実際に張り替える作業の前に「プレテン」と呼ばれる作業を行う。プレテンとは、正式には「プレストレッチ」と呼ばれ、その名の通り事前にトロリ線をストレッチしておくこと。実際に張る際よりも強い2トンの力をかけ、最初に延びる分を延ばしきってしまう作業だ。「30分ぐらいかければ延びは取れる」という。

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