新幹線の「トロリ線」張り替え作業に密着した 安全のかなめ「架線交換」を初めて昼間に取材

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トロリ線の交換周期は場所によって異なるが、同社静岡電力事務所の小澤聡所長によると、新幹線が高速で走る本線は「約10年程度」と比較的長い。逆にすぐに磨耗するため頻繁に取り替えるのは、意外にも駅構内。「特に駅で停車中にパンタグラフが当たる部分は減る」といい、1年ほどで交換するという。高速走行する列車のパンタグラフによる摩擦よりも、一カ所で電流が流れ続ける場所のほうが磨耗は早いのだ。この日作業を行った場所のような車両基地の中などは、3年程度で取り替えるという。

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延線車に積まれた新しいトロリ線のドラム。前方(右側)に向けて延ばしていく

トロリ線の張り替え作業はドラムを積み込む「延線車」と、上下に可動する作業用の台を備えた「作業車」を使って行う。当然ながら張り替え作業は架線の通電を停めて行われるため、延線車や作業車はディーゼル駆動だ。

この日は張り替える長さが約400mと短いため、2両の延線車の間に作業車2両を挟んだ4両で行われたが、本線でドラム一つ分の作業を行う場合は6両になるという。

場所によって違う太さや材質

今回作業を行う場所は、車両所内の行き止まりの線路だ。黄色と青に塗り分けられた4両の車両はゆっくりと線路の行き止まりに向かって進む。最後尾の1号車には、銅色に輝く真新しいトロリ線のドラムが積まれている。車両が作業位置に到着して停止すると、1号車のドラムから新しいトロリ線を先頭の4号車まで綱引きのように延ばしていく。

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車両を切り離してバックさせ、新しいトロリ線を延ばしていく

4号車の作業台に乗った社員が行き止まり部分の架線の終端部に新しいトロリ線を仮止めすると、1・2号車は3・4号車と切り離して今度はバックする。走りながらドラムから新しいトロリ線を引き出し、張り替える区間の全長にわたって新しいトロリ線を這わせていくのだ。新しいトロリ線は古いトロリ線に金具でぶら下げながら延ばしていく。

トロリ線は場所によって材質や太さも違う。材質は銅を主体とした合金だが、今回のように低速で走る区間に使うトロリ線にはスズを配合して固くしているという。東海道新幹線の多くの区間で使っているのは断面積が170平方㎜のトロリ線。直径は15.49㎜で、磨耗により直径が12.5㎜を切ると取り替えの時期となる。今回のような基地内などは断面積が110平方㎜を使っており、直径は12.34㎜。こちらは直径が7.5㎜を切ると取り替え時期だという。

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