一青妙さんがみた「台南地震」被害の現実 被害は「面」ではなく「点」で起きていた
ビルに近づくにつれ、異様な光景が目の中に広がっていく。現場周辺の建物、たとえば木造2階建ての住宅や5、6階建てのビルはそのままの姿で立っている。周囲にはなんら被害は見受けられないのに、突然1カ所だけ、巨大な建物が鉄筋などを露わにして倒れているのだ。
ビルから視線を離せば、道路両脇の飲食店や商店は道路封鎖で開店休業状態。倒壊したビルにフォーカスされていたメディアの映像と、自分が目の当たりにしている実際の光景がうまくつながらず、まるで映画のセットにいるようだった。
台南市の被害は「面」ではなく「点」
「台南市の被害は、面ではなく点だ」と台南市議の郭國文さんは言う。永康区が地元の郭議員は、今回の地震は1999年に台湾を襲った大地震や2011年の東日本大震災のように広範囲な被害をもたらした地震とはレベルが違うもので、その点を日本の人たちに理解してほしいと言う。9日当時「現場の最前線にいる私たちに足りないのは、がれきの中に閉じ込められている人たちを救出する時間だけ」と苦渋の表情を示した。
現場では台南市の賴清徳市長が、閉じ込められた人の家族との対応に追われていた。一日2回、賴市長自ら家族など関係者に向けて説明会を行っていたが、訪問当日はちょうど被災現場の救出活動に大型の重機を入れることを決定した日だった。そのため、「重機を入れることは、まだ中に閉じ込められている生存者にとって危険ではないのか」と心配する家族たちからの涙ながらの抗議を受けていた。
賴市長としては、発生後に生存している可能性が高い「黄金の72時間」を過ぎてしまった以上、救出のスピードを上げるためには大型重機の投入が得策と判断していたと思うが、家族の気持ちと板挟みになっており、説得に苦労している様子だった。賴市長や郭議員をはじめ、行政スタッフは、まさしく不眠不休の対応だった。また、賴市長の靴がぼろぼろになっていたり、目の周りにはくまが出ていることなどがメディアで報道されるなど、その奮闘ぶりが大きな話題になっていた。
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