英国の名門新聞が、ついにネットに殺された 「インディペンデント」が電子版オンリーに
「大きさを変えただけで、売れるの?」という懸念は杞憂に終わった。電車の中でも読みやすい小型判は「なんだか、トレンディで格好いい」というイメージがあり、人気を大いに回復させた。タイムズも小型判を発行するようになり、ガーディアンは縦に細長い形(「ベルリナー判」)を導入していった。
それでも、この人気は長く続かず、一時は廃刊のうわさも出たが、2010年2月、元KGBのアレクサンドル・レベデフ氏に買収された。買収価格はほんの1ポンド。誰も他に買う人がいなかった。元KGBが英国の新聞を買うのはこれが初だった。
レベデフ氏は早速、新鮮な試みをスタートさせる。2010年10月、インディーの記事を使いながらも、1つ1つの記事が短い、若者層を主要読者とした、「20分で読み終える」新聞として、簡易版「i(アイ)」を創刊したのである。値段はインディーの当時の価格の5分の1(20ペンス)であった。英国の高級紙が簡易版を出すのは初である。
デジタルで出遅れ、簡易版のほうが人気に
2016年に時計の針を進める。
英ABCなどによれば、インディーの発行部数はわずか5万6000部。それに対し、簡易版iのほうは約27万部。弟分の新聞が本紙をはるかに超えるようになっていた。
稼ぎ頭のiは、ESIメディアがインディーの完全電子化予定を発表した同じ2月12日、地方紙発行大手ジョンストン・プレスに2400万ポンド(約40億円)で売却されることが明らかになった。
電子版オンリーに移行する新聞はインディーとその日曜版の「シンディー」こと、インディペンデント・オン・サンデーだ。日刊紙は3月26日、日曜版は3月20日が最終版となる。
複数紙の報道によれば、インディーに勤めるスタッフのうち、25人が完全電子化後のインディーで働く。40人がiの現在のチームに合流する。100人は失職する見込みだ。
ここに至るまでの「敗因」は何なのだろうか。
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