創刊5年で27万部のイケイケ新聞があった バイラルっぽい新聞紙「i」が英で人気
2010年に紙媒体の新聞を創刊するなんて、無謀なことだと思ったことだろう。
イギリスのインデペンデント(Independent News & Media)社が5年前に創刊した、長文を好まない読者向けのお手軽版スピンオフ紙「i」(通称「インディ」)は、イギリスで現在もっとも急成長している「紙の新聞」だ。しかも、インディペンデント社の赤字削減にも貢献しているという。
部数公査機構(ABC)によれば、「i」の発行部数は27万6000部。いまや部数でいえば「テレグラフ」や「タイムズ」に次いでイギリス国内第3位の「高級紙」だ。この数字は「フィナンシャル・タイムズ」(20万8000部)や「ガーディアン」(17万部)を上回っている。
安価にわかりやすくで、赤字を解消
昨年発足した同紙のデジタル版「i100」は、9月に230万ユーザーを突破(comScore調べ)。本家「インデペンデント」の1600万ユーザーには遠く及ばないものの、順調に成長している。
「i」紙とサイト「i100」の成功のおかげで、インデペンデント社の見通しも明るくなった。「i」編集者オリヴァー・ダフ氏によると、インデペンデント社の赤字は、2010年度に2350万ポンド(約43億円)もあったが、「i」と「i100」が生み出す収益により、いまでは赤字がほぼゼロにまで解消したという。
「i」と「i100」の成長の秘訣は、低コスト戦略、わかりやすい記事、そしてネイティブアドだ。「i」は、経費を最小限に抑えつつ、「インデペンデント」紙のジャーナリズムを再構成。時間に追われる現代の読者のため、安価で(価格は20ペンス[約37円]。一方の「インデペンデント」紙は1.2ポンド[約223円])わかりやすい新聞としてスタートした。
TOPページを廃止した、斬新なサイト
「i100」のWebサイトに関しては、トップページを廃止。サイトURL「http://i100.independent.co.uk/」を訪れると、自動的に最新記事の個別ページへリダイレクトされるという斬新なスタイルを選んだ。それが功を奏したと、同紙ニュース編集者のマシュー・チャンピオン氏は言う。サイトのトップページの存在感が薄れる一方で、ソーシャルメディアという「脇道」から個別のニュースにたどり着く読者が増えている現状に対応したものだ。