丸井、「脱ヤングファッション」でどこへ行く? 渋谷の店舗を刷新、「マルイ」の名が消えた
SC型店舗ではアパレル偏重だった売り場構成を見直した。渋谷モディでは書籍や雑貨を扱うHMVの新業態を核テナントとして誘致。飲食を増やし、セミナーなどのイベントスペースも確保するなど、「知的商業空間」をコンセプトに業態転換を進めた。
残りの店舗についても、自主売り場などは一部残すが、原則として18年度中までに全店舗でSC化を完了させる計画だ。最終的に100億円程度の採算改善を見込む。
業態転換に合わせて、2015年度から会計基準も変更。小売り事業の売上高を、「総額表示」から、原価分を控除した「純額表示」とした。見掛け上は約1500億円の減収要因となる。さらに、ここからSC化の進展に伴い、商品売り上げが賃料収入に切り替わっていくことから、今後数年は減収が続く一方で、利益は伸びるというイメージを描いている(右図)。
カードは“即時発行”に強み
収益柱のカード事業にとっても、小売店舗は欠かせない存在だ。
国内全体でクレジットカードを使用したショッピング額は、2004年の26兆円から2014年に46兆円まで拡大。利用される場所は「百貨店・総合スーパー」が最も多く、25%を占める(経済産業省調べ)。
日本クレジット協会・クレジット研究所の河野敬一事務長は「近年、銀行・信販系のカードは苦戦しているが、流通企業のカードは発行枚数を増やしている」と見る。
中でも丸井のエポスカードは、“店頭即時発行”の強みを持つ。目の前に商品があるのに手持ちの現金が足りない客に対し、店頭のスタッフがその場でカード保有を勧め、基本的に約30分で発行するシステムだ。「気持ちが高まっているときに利用してもらうことがその後の頻繁な利用につながる」(青井社長)。
特徴はそれだけではない。エポスカード会員の68%は女性であり、年代も40歳以下が56%を占める(業界全体ではそれぞれ49%、28%)。
一般的に、若い女性はショッピングクレジットへのニーズがあるが、貸し倒れリスクも高いとされる。他社の審査を通りにくい客にも、丸井が即時にカードを発行できるのは、長年培ってきた与信ノウハウがあるからだ。その手法は、当初は与信の限度額を抑え、返済実績に応じて、段階的に限度額を引き上げていくというもの。取扱高が増加する中でも、貸倒償却率は1.7%(2014年度)と、低く抑えることができている。
小売業界が富裕層の高額消費と訪日客の“爆買い”への依存を強める中、丸井はカードで提携先を拡充し、テナントからの賃貸収入でも収益を底上げする。他社と一線を画す独自路線は、小売りの新たな派生形態といえそうだ。
(「週刊東洋経済」2016年2月20日号<15日発売>「核心リポート05」を転載)
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