民生電機業界は厳しい事業環境下、当面は財務基盤の強さが信用力下支えのカギに 《スタンダード&プアーズの業界展望》

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信用力への下方圧力続く、当面は財務健全性が信用力を下支えする構図

直面する事業環境の厳しさは同じでも、各社の競争力や市場地位、また財務基盤の差によって格付けの動きに明確な差が表われている。

ソニーについては、開発や生産体制の効率化や大規模な人員削減など事業構造改革に取り組んでいるものの、急速な事業環境の悪化によって中核のエレクトロニクス事業の収益回復に不透明さが強まっている。シャープの場合も、主力の液晶テレビや液晶パネル事業が依然強い価格低下圧力にさらされている。ただし両社とも主力事業において強い競争力・市場地位を維持していることに加え、比較的健全な財務基盤を維持している。

一方で、パイオニア(2008年末BB+)と日本ビクター(同BBB−)の格付けは、2009年に複数ノッチ引き下げた。パイオニアは、前期に続き、今期も大幅な最終損失の計上が避けられない見通しとなるなど、自己資本の毀損により、これまで同社の信用力を支えていた財務基盤が急速に悪化している。日本ビクターも、販売数量の減少や円高の影響で薄型テレビ事業やカーエレクトロニクス部門の業績不振が続く一方、多額の損失計上によって財務健全性が低下している。エレクトロニクス製品の競争は今後一段と激化する見通しであり、業界大手と比べて事業規模や財務体力で劣る両社の業績は中期的にも下方圧力を受ける懸念があるとみている。

厳しい事業環境から、スタンダード&プアーズは、今後1~2年は民生電機各社の信用力に対し引き続きダウンサイドのリスクがあると考えている。また、業績悪化やリストラ負担によってキャッシュフローに対する下方圧力が強まるなか、これに耐えうるだけの財務耐久力をもつかどうかが、格付け水準の下支え要因として重要度を増しているとみている。各社の設備投資の方針や今後のフリーキャッシュフローの推移にこれまで以上に注目していく。また依然として金融市場が不安定なため、格付け水準が低位にある格付け先については、今後の設備投資や借入返済に向けた資金計画の見通しや取引金融機関支援姿勢を注意深く検証する必要があると考えている。

当面、各社の構造改革の進捗状況とその成果を確認しつつ、今下期に向けた各社の業績回復の見通しがより確実なものとなるか注視していく。また各社の中期的な戦略の方向性や業界再編の動向などにも格付け評価上の重要なポイントとして注目していく。主要製品の収益環境悪化によって業績低迷が長期化する見通しとなり、財務健全性がさらに大きく悪化する懸念が強まる場合には、各社の格付けに対する下方圧力が強まると考えている。

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