4K番組「録画禁止」を密室で決めていいのか 民放5局はガラス張りの場で主張するべき

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こうした問題を指摘した前回記事が大きな反響を呼ぶ中で、NexTV-Fの理事会が開かれた。理事会を前に、あらかじめ民放連が中心になってコピーネバー運用の必要性を訴える意見書を提出。これに対し、インターネットユーザー協会(MIAU)、主婦連合会といった消費者団体に加え、電機メーカー中心の業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)がコピーネバー運用開始への異議をNexTV-Fの理事会に意見書として出していた。

NexTV-Fが決めようとしている次世代放送技術に関して、真っ二つに割れた意見が出されたことから、理事会で検討されたというわけだ。もちろん、この話題だけを理事会で討議するわけではないが、冒頭から須藤修理事長が「コピーネバーに関し民放連会長他、主婦連他、JEITAから意見が出ている。慎重に扱うべき」との意見が出され、コピーネバーに関する話題中心の討議になった。

「外部に開かれた会議」の必要性

コピーネバーの運用に関しては、これまで委員会で討議された経緯が説明され、民放連会長他、主婦連他、JEITAから意見がNexTV-Fに届いていることを報告され、NexTV-Fの須藤理事長からは「消費者を巻き込んだ議論に発展しており、大変な問題だ。理事会で結論は出ないだろうが、各理事にも情報共有をしながら意見交換すべき」との問題提起が行われた。

理事会では、これまで筆者が指摘し、求めていた公開議論を須藤理事長他が推した。「NexTV-F内、及び外部に開かれた会議の双方で検討すべき」(須藤理事長)という意見は至極真っ当なものだ。そのほかにも、「視聴者や権利者含めた関係者を集めた場で議論すべき」という意見が出る一方、「NexTV-Fで議論すべきだ。そうでないと団体の存在価値がない」という意見が一部民放局から出される場面もあった。民放局には不満もあるようだ「インターネットでの議論は極端過ぎる。目指しているのはすべての4Kのコピー禁止ではない」との意見が、フジテレビや日本テレビから出ている。

本記事は、クローズドな議論の場であるNexTV-F理事会の議事録を元に構成している。ゆえに詳細な内容を伝えることはできないが、理事会内で意見の対立が起きていることは間違いない。

繰り返しになるが、まずは公開の場で議論をするべきだ。公共の電波を用いた放送サービスは、そのサービス事業に関する免許を持つ放送局の独自判断だけで運用ルールが成り立つものではない。

これまでに”テレビ局側が一斉に行動を起こす”といった独断専行がなかったならば、今回の議論も見過ごされていたかも知れない。しかし過去の事例を見る限り、消費者の使い勝手に大きな影響を与える運用規定を密室での会議に委ねるわけにはいかない。

もし、次世代放送サービスにおいて複製禁止機能が必要というのであれば、受益者であり公共の資産である周波数帯域のオーナー(国民、消費者)に対しガラス張りの場所で主張を展開し、理解を得る努力をするべきだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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