シャープと鴻海、8時間交渉でも埋まらない溝 協議を終えたテリー・ゴウ氏を直撃

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早く資金を入れ、設備投資なども行い、昔のように技術で世界ナンバーワンに戻したい。シャープはほかにもオフィス関連やアプライアンスですばらしい技術を持っている。だが、クラウドやIoT(モノのインターネット)など、次世代の技術にも力をいれないとだめだ。これは鴻海の強みでもある。

鴻海はブランドを持たないが、シャープには強いブランドがある。白モノなどをスマートな方に発展させ、市場シェアを高めることが可能だ。われわれとしては、これだけ多額の金額を出すには、自信がなければやらない。政府から資金が出ているわけではない。シャープの「新たな創業」という形にしたい。

――出資規模についてはどう考えているか。

今はたくさん制限があって言えない。両社の取締役会を経た上で、29日に話すことになる。

交渉は9割乗り越えた

――社員の雇用は維持する考えなのか。

ソーラー以外は守る。シャープの中にもともと構造改革チームがある。これだけは言えるのが、シャープを分解することはないし、ブランドも継続させる。もう一度ワールドワイドに展開できるようにしていく。

シャープと鴻海の交渉はどうなるのか。本社前には多くの報道陣が駆け付けた。(撮影:ヒラオカスタジオ)

特に若い社員、40歳以下の社員を切ることはない。先ほど言ったように、出資については、シャープの若い人たちに出資しているという認識。特にシャープの若い人たちはイノベーションの考えを持っている。必ず成功すると思っている。

――交渉における課題は何なのか?

交渉は9割乗り越えたと考えている。ポイントは取締役会を通ったということ。9割は乗り越え、残りの1割は法的な規制。私としてはほとんど乗り越えたと思う。問題はない。

◇   ◇   ◇

以上の内容を受け、各紙が「鴻海とシャープが大筋合意」と伝えたところ、シャープは公式にその事実を否定した。シャープは2月29日までに鴻海の提案に対し答えを出すことのみ本日決定したというのだ。

シャープが即時否定に動いた背景には、産業革新機構案もまだ選択肢として持っているということがある。両案が拮抗しているため、産業革新機構への体裁を整える狙いがあったものとみられる。

さらにこれを受け、テリー氏は「文化の違いから、日本人はわれわれに比べて、信頼を寄せるまでに時間がかかる。われわれは誠実さを示すのみだ」と話し、両社の温度差を浮き彫りにした。

今後のパートナーを選べない状態が続くシャープ。再出発に必要な条件を見極め、残り1カ月で正しい選択を今度こそすることができるのか。交渉は大詰めを迎えている。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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