才能があっても、怠け者に傑作はつくれない ビートルズは何がスゴかったのか
多数のバンドが我こそはとひしめいていたハンブルグで、2人は毎晩午前2時まで演奏するという苛烈な日々をこなしながら、技術と自信を身につけていった。1964年までの間にビートルズは約1200回の演奏経験を誇り、何千時間をも演奏に費やしていた。それは、並のロックバンドなら全活動期間を通じても到達し得ないような時間なのだ。そして彼らが演奏に費やした時間こそが、ビートルズを数多のバンドから分かつことになった。
ビートルズの4人は練習の鬼だった。しかし、ただ単調に練習を繰り返すのではなく、冒険心に溢れた練習の鬼だった。当時人気だったロックンロールを繰り返し練習して真似るようなことはせず、実験を重ね、即興を試し、常に特別な何かをつけ足しながら、それが自分だけのスタイルになるまで練習した。機械的な反復から得られるものはないということを、4人は理解していた。4人は常に感想を伝え合い、意見を交換しながら改良に改良を重ねた。そうするうちにビートルズの音楽はその他大勢の音楽と同じであることをやめ、ビートルズの音楽になっていったのだ。
活動初期のビートルズの面々は、特に優れた演奏者というわけではなかった。歌もギターもドラムも、技術的に彼らに勝る演奏者はたくさんいた。(ジョン・レノンは記者会見で、リンゴ・スターを世界一のドラマーだと思うかという質問に対して冗談で「ビートルズの中でもリンゴより巧いドラマーはいるよ」と切り返したことがあった)。それでも、リバプールの裏通りからやってきた4人の英国青年たちは、「エド・サリバン・ショー」という晴れ舞台で緊張した素振りを微塵も見せなかった。それは、長年一緒に演奏し、血の滲むような努力を重ねてきた4人だからこそ持てた自信の賜物だったのだ。
自分を磨く努力をしたかどうか?
クリエイティブな成功を手にした人とそうでない人の違い。それは、ほぼ100%間違いなく、自分を磨く努力をしたかどうかで決まる。成功する人は、考えられないような時間と労力を費やしてよりよい結果を出そうとし、そうすることで能力がさらに増幅されていく。あなたよりいい結果を出している人がいたら、その人はほぼ間違いなく、あなた以上に自分を伸ばすことに時間を割いている。
練習は大切だが、やればいいというものではない。何も考えずに完璧になるまで何かを反復するのは悪い練習だ。クリエイティブな改良を加えるために時間を割きながらやるのが、良い練習なのだ。マチスは同じ裸婦のモデルを何度も描いたが、彼の目的は描くたびにより正確に描写できるようになることではなかった。描くたびに独創的になることが目的だったのだ。
ビートルズは演奏の質を高めるためにクリエイティブな練習を惜しまなかった。そうすることで自分たちの才能を最大限活用することができたのだ。注ぎこんだ努力と生み出される結果は、比例関係にある。才能があっても怠け者が傑作を作り上げた例はない。一生働かなくて済むほど経済的に成功した人とは、つまり一度も仕事を怠けたことがない人なのである。
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