BPO委員長、「政府の放送法解釈は間違いだ」 NHK「クロ現」過剰演出への政府対応に物申す
3期目ではそろそろよくなっているかなと当初は思っていた。我々の意見も浸透し、つまらない間違いは起きないと考えていたが、冒頭につまらない間違いが次々に起きて相当がっかりした。その後、佐村河内氏の問題で1年かかったが、本人の話を直接聞いてそれまで明らかになっていない真実に我々自身が迫ることをやった。番組制作者以外の人々にこれだけインテンシブなヒアリングをしたのは初めてだった。
今回の「クロ現」も、委員のある人が民放ならともかくNHKがこんなことをやるとはという感想をもらしたほど、報道番組としてあるべきでないことをやっても周りが誰も止められない状況があったという意味で大きな問題だった。一人の記者がちょっとこれはということをやっているのに、制作現場でいろんな人がおかしいのではと気がつきながら指摘しない。指摘しても無視されることがあったのは事実。NHKとして相当深刻に考えなければならない事態だった。
3つの委員会の役割分担がわかりにくい
――BPOは3つの委員会の役割分担が外部から見ればわかりにくい。改革は必要では?
たしかにかなりわかりにくいかもしれない。“出家詐欺”でも放送倫理検証委員会と放送人権委員会が同じく扱っている。
人権委は申し立て制をとっているので、申し立てがあると審理しなければならない。そのために申し立てをする権利を制限している。基本的に個人の申し立てしか受けないとか。
検証委は申し立て制をとらず、こちら側が意見を述べることが放送倫理向上にとって意味があると思う案件しか扱わない。「これ放送倫理上問題ある案件なのに、どうして取り上げない?」と言われたことも何度かある。
検証委に限ると、その分野の一流の専門家が集まっている。その反面、月1回しか会議の日程が確保できない。どうしても時間がかかる。問題が起きてから、みんなの意見がそろって順調に進んだとしても、意見書になるのは最短で4カ月ほどかかる。その意味ではもっと委員会の開催回数を増やすとか部会制にして2つの部会で並行して審理することなどは考えられなくはないと思う。もう一つは今みたいに非常勤の専門家が集まって意見を言うのでなく、専任の人がやる形。そうすれば早くはなる。しかし、今のようなすぐれた専門家が得られるだろうか。それぞれ一長一短でこう変えれば絶対よくなるというものではない。