過剰反応に陥った新型インフルエンザ対策の大混乱
水際検査をすり抜けて、日本に上陸した新型インフルエンザ。感染が確認された大阪、兵庫など関西圏では4000校以上が休校し、コンサートなどのイベントも相次いで中止となった。新型とはいえウイルスそのものは弱毒性であるため、専門家からは「過剰対策」との指摘も多く、厚生労働省は新型インフルの行動計画見直しを迫られている。
一方、まだ感染者が確認されていなかった都内では18日、ある企業の決算説明会が物々しい雰囲気で行われていた。受付にはアルコール消毒剤を備え、出席者全員にマスク着用が求められた。会社側の出席者も含め、会場内に集まった100人近くがマスク姿。おまけに、説明会後の名刺交換は「今回はご遠慮させていただく」という報告までなされる“厳戒態勢”だった。
ただ、この会社が特殊事例というわけではない。海外に加えて国内出張の自粛に踏み切るほか、社員に通勤時のマスク着用を義務づけるなど、どこも感染阻止に必死だ。
もともと国が流行を想定していた強毒性の新型ウイルスに対し、事業継続計画を事前に策定していた企業もある。だが、今回は想定外の弱毒性の新型だったため、業種によって警戒の度合いはばらばら。ただ、「対策が大げさになったことで、経済的なマイナスのほうが大きくなっていないか」(国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長)とも言われる。刻一刻と状況が変わり、企業は難しい判断を強いられている。
マスク販売が200倍
さらに「転ばぬ先の杖」とばかりにマスクの需要はうなぎ上りだ。大阪を地盤とするドラッグストアのキリン堂では、感染拡大が発覚した直後、マスク販売が平時に比べて50倍も拡大した。スギ薬局では関西圏の店舗のマスク売り上げが200倍超に膨れ上がったという。もともと4~5月は花粉症シーズン終了後の需要閑散期だが、マスク大手のユニ・チャームや興和では休日返上で増産状態に入っている。それでも全国各地での品切れは解消していない。