トヨタとスズキが組めば、インドでは最強だ 小型車に強いスズキとトヨタが組む意義
例えばカローラが属するセグメントでは、競合するフォルクスワーゲンの「ジェッタ」は83台(2015年12月)、現代自動車の「エラントラ」は79台(同)、ルノーの「フルエンス」は3台(同)しか売れていません。カローラが売れないのではなく、このクラスの自動車が普通のインド人の手に届かない存在なのです。
その上のカテゴリーでは、トヨタのSUV「フォーチュナー」が圧倒的1位です。これは2位~13位の車種すべてを合わせた台数の3倍も売れています。トヨタの全体シェアは大きくありませんが、(車種によっては)それ以上の力を持っています。
これに、ボリュームゾーンである小型車セグメントを支配するスズキとの連携が実現すれば、影響力は全セグメントに及ぶというわけです。
トヨタがインドでダイハツを生かせない理由
――そもそも、トヨタにとっては、ダイハツ車をインドで売って攻略すればいいのでは?
ダイハツのインド参入は、簡単ではありません。小型車開発の模索として、当然トヨタとダイハツは研究開発をするでしょうけれども、研究レベルからその先の実行は難しいと思います。例えばダイハツの「タント」をインドに投入すれば、結構売れるはずです。
トールワゴンはスズキの「ワゴンR」だけですし、月に1万台以上コンスタントに売れています。しかし、低価格の実現は困難を極めます。ワゴンRは日本で115万円からですが、インドでは68万円からです。同じくスズキのエブリイは日本で120万円からですが、インドでは型落ちですが43万円からです。これが新車の値段です。
――ワゴンRが60万円台とは安いですね。
そうです。死に物狂いで現地調達率を引き上げて開発しても、スズキに対抗する価格を実現して、継続的に利益を出すのは難しいです。スズキには対抗策が多数あり、挑戦すれば血まみれになる。皆、それを知っているわけです。
実際、この5年間はそういう時代でした。欧米勢など皆スズキに挑戦して敗れ去りました。
ダイハツをトヨタが完全子会社化して、10年くらいの赤字を覚悟してダイハツ車投入で戦略を組めば、シェアの上では善戦すると思いますが、悲惨な消耗戦になるでしょう。「小さく産んで大きく育てる」トヨタとしては、赤字先行でガンガン行くことはないはずです。
――トヨタの提携メリットの一つとして、スズキの販路と言われますが、素朴な疑問としてインドでの販路の開拓はそんなに難しいのでしょうか。
難しいです。例えばディーラーの土地です。インドの街中をクルマで走っているとわかりますが、繁華街の角地など良い場所がずっと空き地になっていることが多々あります。
そういう土地は、一見するといい土地のように見えるのですが、実は問題だらけ、因縁だらけの土地だったりします。所有権を主張する人が3人いて10年裁判やっている、そのうちのひとりがヤクザだとか、相手が襲撃されたとか。そういう、ややこしい話です。
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