恋愛不要!20代の希望は「親公認見合い」 結婚でも省エネ志向

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両親も親戚も見合い結婚で、全員幸せそう。ユリエさんには、恋愛結婚にこだわる理由がない。それどころか、

「恋愛感情って、突然なくなったりするから怖い。だったら、友達くらいの人でいい。いてもいなくてもいいくらいの、『そこそこいい人』がいいです」

離婚は絶対したくない。だからこその前向きな恋愛回避だ。

『恋愛しない若者たち』(牛窪恵著)にある「20代男女の恋愛と結婚に関するアンケート」によると、「結婚に恋愛というステップは必要か?」との質問に「必ずしも必要ない」「必要ない」と答えた独身の20代は男性が17.5%、女性が10.5%だった。冒頭のリカさんも、婚前恋愛不要派だ。

「恋愛してから結婚したら必ず幻滅するけど、結婚してから好きになれば、良い面も悪い面も等しく向き合えます」

都内で総合職として働くミカさん(25)は、カラリとした口調で両親にこう告げた。

「お父さんたちが何人か用意してくれたらその中から選ぶから。いいよ、私、お見合いする」

社会人になってすぐ、婚活サイトに登録した。お見合いパーティーや合コン、SNSも活用して出会いを増やした。その中で心から好きな人に出会ったが、玉砕。「恋愛は努力と結果が比例しないし、一番好きな人とは結婚できない」と悟った。

金・時間かからず確実

留学経験があり、地方転勤もこなすが、仕事への執着はなく、「いつ家庭に入ってもいい」。

就職活動の時のグループ面接。横一列に並べられた自分たち女子学生を、男性の面接担当者が品定めする視線が痛かった。

「しょせん、女は男社会に添えられる花のようなものか」

結局、「やりがい」よりも「条件がよく親も安心させられる」ことを優先し今の仕事に決めた。結婚願望はその頃から強い。「一番好き」を追い求めても、うまくいくとは限らない。だったら「省エネ」でいきたい。親が気に入る人を、親が見つけてくれたらいいと思うが、親の意識とはすれ違っている。

「父からは『東京で働いていれば、自分で相手を見つけられるだろう』と言われています」

大学3年のユウトさん(21)は、今、恋愛が怖い。仲良くしていた同じサークルの女性に告白したが、フラれた。その後女性の態度は急変。LINEをブロックされ、大学でも避けられるようになった。

それ以来、女性が信じられない。現在、「彼女いない歴=年齢」を更新中だ。合コンの誘いを受けても断り、一度も行ったことがない。

「お見合いって全然アリです。親とか、自分をよく知っている人から紹介されるわけだし。第一、お見合いで嘘はつけないですよね。だから信用できる。合コンよりずっといい」

ユウトさんのように「誰とも付き合ったことがない」人の割合は、未婚20代の男性で41.6%、女性で26.7%を占める(リクルートブライダル総研「恋愛観調査2014」)。

婚活支援サービスを手がけるパートナーエージェントの丸尾千扇さんによると、「恋愛経験がない」「自信がない」という20代の会員が増えているという。そのため同社では、コンシェルジュが婚活者に寄り添い、手厚い支援を提供している。例えば異性から「ノー」を突きつけられて落ち込んでいたら、「それは失敗ではなく経験と呼ぶんだよ」と励ます。

「かつては寿退社で職場の女性が入れ替わり、自動的に結婚相手が見つかった。だが今は、自分から動かないと結婚できない。結婚相談所は料金の高さなどから20代にはハードルが高い。だから、お金も時間もかけずに確実性が高い“お見合い”に期待するのでしょう」(丸尾さん)

夢は地元でゆっくり

別の理由でお見合いを希望する20代もいる。都内の大学に通うタケシさん(21)は、大学卒業後は、地元・青森での就職を望む。一緒に青森に来てくれる女性を東京で見つけるのは難しいと考え、就職後すぐに、地元でお見合いするつもりだ。

通っているのはいわゆる難関大学。同級生たちは、大手広告会社や総合商社を目指すが、タケシさんは明るく言い切る。

「そういう会社って、給料高くてもめちゃめちゃ忙しいじゃないですか。僕はそれより、ゆっくり暮らしたい。お金は最低限必要な分だけでいい。自然に囲まれた田舎のほうが、子どもものびのび育つからいいんです」

タケシさんの父も、同じ理由で地元に戻った。父は、母の写真を携帯電話の待ち受け画面にするほどの愛妻家だ。

「両親が理想です。恥ずかしくて言えませんけど」

26歳までに結婚して、子どもができてもラブラブの夫婦でいよう。父から譲り受けた車でドライブに行こう。夢は膨らむ。

欲しいのは、他人が羨むような劇的な何かではない。ただ等身大の幸せだ。不確かな未来の中に、今、20代は、「お見合い」という夢を見ている。

※文中カタカナは仮名

(ライター・柳澤明郁)

※AERA 2016年2月8日号

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