北海道新幹線は試乗会の後も不安がいっぱい "北の大地"で新幹線を待ち受けるハードル

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在来線の青森―函館間の料金5490円に対し、新幹線の新青森―新函館北斗間は3割増しの7260円。また、現在の在来線特急を活用した「青森・弘前フリーきっぷ」は、函館と青森・弘前間のフリーエリアが4日間乗り放題で6990円(自由席利用)と割安で、沿線住民がよく利用していたが、この切符は廃止される。

新幹線だと前出の「北海道お先にネットきっぷ」を使うことになるが、新青森―新函館北斗間を往復で購入すると8700円となり、割高だ。しかも、新青森、新函館北斗でそれぞれ在来線に乗り換える手間を考えると、かえって不便になるという声もある。

結局、時間がかかり、料金が高いという点が、需要の伸びない一因になっているようだ。ひいては、これが本数の少なさにつながる。東京―新函館北斗間は1日10往復。仙台、盛岡、新青森と新函館北斗を往復する列車を合わせても、13往復にすぎない。前述のとおり、1日5000人程度の利用しか見込まないのであれば、致し方ないという見方もできる。

しかし、本数の少なさは利便性に直結する。時間が合わないということで、新幹線より航空機を選ぶ人も出てくるかもしれない。これでは、本数の少なさがさらに需要を減少させる「負のスパイラル」に陥りかねない。

悲観材料ばかりではない

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グランクラスで提供されるおつまみは、今のところ1回限り(撮影:尾形文繁)

とはいえ、悲観する材料ばかりではない。かつてJR九州が九州新幹線を暫定開業していたとき、新八代駅では新幹線と在来線「リレーつばめ」号がわずか3分の接続時間で乗り継ぎできた。

これをヒントに、新函館北斗駅でも、移動距離の少ない対面乗り換えを採用している。乗り継ぎ時間はもっと短くできるはずだ。

さらに2年後には、1日1往復、青函トンネル内を高速走行する列車が登場する。この本数が増えれば、時短効果で航空機に対抗できるようになるかもしれない。航空会社が危機感を持ち、さらに運賃を値下げすれば、新幹線もそれに対抗して、さらに値下げするというシナリオも考えられる。

試乗会の前日には、北海道新幹線「グランクラス」のサービス内容が発表された。「新幹線のファーストクラス」ともいわれる、最高レベルのおもてなしが売りだ。ただ、無料ドリンクのお代わりはできても、無料のおつまみは1人1個しかもらえない。

東北・北海道新幹線でグランクラスのサービスを担当する、日本レストランエンタプライズの高橋園子執行役員に「飛行機のファーストクラスは、おつまみを追加でもらえる」と意地悪な質問をしてみたら、「そういった要望は受けており、改善に向けて検討中」という答えが返ってきた。

たかがおつまみかもしれないが、利用者の意見をサービス改善に反映させようとする意欲の表れであることは間違いない。こうした改善を重ねていけば、数年後の北海道新幹線は所要時間、料金、運行本数のいずれも満足できるサービス水準になっているかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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