『世界同時不況』を書いた岩田規久男氏に聞く


 量的緩和は、民間の非銀行部門でおカネがジャブジャブにないと効果が薄い。日銀引き受けというと、すぐにハイパーインフレ、通貨の信認が云々されるが、不況とはある意味では通貨の信認が厚くなるという現象だ。大阪大学の先生は「貨幣愛」とか言っている。みなが縮こまる。信認がありすぎるのも問題で、ある程度それをぐらつかせる。そうなれば、もっとモノを買い、おカネを使い、またドルを買うようになる。

--アメリカはなりふりかまわぬ政策をとっています。

アメリカではマネーストックが12%、イギリスでは18%も増えている。これに対して日本は1%しか増えていない。昨年9月のリーマンショックの時点と変わらない。

--その状況で、日本の景気回復の見通しは。

日本は世界の中で最後尾近くで回復していくことになろう。今回の場合、日本の景気が悪くなり始めるのも、リーマンショックよりかなり前だった。このところ日本経済は「外」頼みで来た。よくなったといわれたのも、それ以前のまれにみる世界好況が幸いした。

今後はしばらくの間、アジアが支える。金融がそれほど傷んでいないうえ、インフラの整備もこれからであり、財政出動の効果がまだある。アメリカもあれだけの政策発動をしているわけだから、いずれ立ち直ってくる。そうなれば日本の輸出は増えてくる。ただヨーロッパはまだ無理がある。財政政策には制約があるし、金融政策は国ごとにとれないうえ、まとまりにくい。それだけユーロの回復は遅れる。

ただしアメリカがよくなるといっても、02年ごろから始まったような回復の勢いはない。日本は財政の持続性を考えても金融がしっかり支えていかないと、回復の程度はしれていることになろう。

(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済)

いわた・きくお
1942年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程修了。上智大学経済学部教授等を経る。上智大学名誉教授を兼任。著書に『土地と住宅の経済学』(日本経済新聞社、エコノミスト賞受賞)、『昭和恐慌の研究』(編著、東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞受賞)など。


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