『世界同時不況』を書いた岩田規久男氏に聞く
財政出動する場合には、いわゆる国債オペを使い、日銀は普通、銀行から国債を買い、銀行の日銀当座預金が増える。そのままにすると過剰準備を銀行は持っているだけで、非銀行部門という民間におカネが流れず市中のおカネは増えない。民間銀行が足りなくなった国債を市中の非銀行部門から買って、やっとおカネが出ていく。この仕組みだと、日銀はおカネを増やすためには相当の買いオペをしないとならない。
--量的緩和の時代と高橋財政とではどこが違うのですか。
実際、「平成の停滞」のときに量的緩和がこの方法で行われたが、国債の買い方が少なく、日銀当座預金残高は30兆円ぐらい増えたものの民間の国債を買うところまでにはいかなかった。そのため、おカネは4年で11%しか増えていない。だから日銀当座預金残高ではなく、おカネがどれだけ出ているかを目標にしないといけない。
高橋財政の場合は、国債が民間に出ていかなくて日銀が買っておカネが政府預金となり、それを基に財政支出した。銀行にではなく非銀行部門に直接おカネが出て、効果は早い。現在の経済状況がここまでくると、同様に日銀の直接引き受けにしたらいいのではないか。
--法律上、国債の日銀引き受けはできないのでは。
私もそう思っていたが、実は現行法でもできることを最近知った。確かにいまは財政法で日銀は直接に買ってはいけないとなっている。ところが財政法には国会の決議で日銀に対して国債を発行できるとある。そして日銀法にもそれを受けて直接引き受けていいと書いてある。つまり緊急事態だとして国会さえ決議すればいいのだ。法律改正しなくてもよく、苦肉の策の政府紙幣より早く実行できる。
--実際にはどのように実行するのですか。
本年度の国債発行額は年間40兆円台になる。上限をその40兆円と決めてもいい。期待インフレ率は、物価連動債と普通の国債との利回り差でだいたいわかる。実際にはインフレ率はきわめて低い。それを参考にしながら毎月国債を買う、言葉を換えれば日銀が引き受ける。いまアメリカが月に4兆円ぐらい、イギリスが3兆円ぐらい、日銀はその間の額でいく。日銀には従来の国債オペもある。長期国債を直接引き受ける前提で、オペ額を算段する。さらに必要なら、社債やCPの購入も決めていけばいい。