企業変革の核心 「このままでいい」をどう打ち破るか ジョン・P・コッター 著/村井章子 訳~成長に不可欠の危機感醸成を実例豊富に掘り下げる

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企業変革の核心 「このままでいい」をどう打ち破るか ジョン・P・コッター 著/村井章子 訳~成長に不可欠の危機感醸成を実例豊富に掘り下げる

評者 YSコンサルティング代表 黒田康史

 本書は、リーダーシップ論、企業変革論で有名なコッター教授の最新作だ。彼の説く企業変革の8段階のプロセスの中でも最初の段階の「危機感を生み出す」こと、そしてそれを維持していくことにフォーカスして、その部分を深く掘り下げた内容は実践的であり、多くの実例とともに大変参考になる。

彼が「危機感」にこだわるのには理由がある。変化のスピードが速い現在、どんなにうまく行っていても現状に満足せず、常に変革を続けることが、企業の持続的な成長には不可欠であり、そのカギとなるのが「危機感を生み出し維持する」ことだからだ。

本書によれば、「危機感」は「本物の危機感」でないと意味がなく、「偽の危機感」や「自己満足」は大敵だ。本書では、これらを打破する方法について十分な議論が尽くされている。著者はまた、「本物の危機感」を高めるには人々の頭(理性)だけでなく心(感情)にも訴えかけ、目を覚まさせ、行動を促すという基本戦略が有効と説く。人々の心に働きかけ、心を動かすことの重要性は、論理的思考がもてはやされる昨今ではややもすれば過小評価されがちだが、評者の経験からも頭以上に重要な要素だ。

著者が唱える基本戦略上の四つの戦術はどれも重要だが、中でも「危機感を行動で示し」、「変革否定論者に対処する」ことに注目したい。評者の経験からも、リーダーは常に率先垂範し、「行動」で示すことが大切だ。また否定論者への対処は、多くのリーダーにとって最も困難な課題の一つだ。本書では、懐疑論者との違いを明確にしながら、決して否定論者を甘く見るべきではないと説く。そして、陥りやすい過ちを指摘し、三つの攻略法を提示しているが、いずれも現実的で有効といえよう。

John P.Kotter
ハーバード経営大学院松下幸之助記念講座名誉教授。専門はリーダーシップ論。マサチューセッツ工科大学とハーバード大学卒業。1972年からハーバード経営大学院で教鞭を執り、80年に33歳で教授に就任、終身在職権を得た。

日経BP社 2310円 229ページ

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