京急の眠らない夜…元日・終夜運転の舞台裏 「中の人」が見た初詣輸送ドキュメント
●京急蒲田駅 2:00
大みそかから元旦にかけての支線の運転では、途中駅止まりとなる例もある。穴守稲荷神社を沿線にかかえる空港線は、京急蒲田から穴守稲荷駅までの運転となる。羽田空港国内線ターミナルが夜間営業していないため、この日に限って途中駅止まりとなるのだ。その穴守稲荷行の最終電車に乗ってみた。
この駅のホームにも、京急ファンが集まっている。一年でこの日しか見ることのできない「穴守稲荷行」の表示を見るためだ。この日に限っては、列車の正面に看板を取り付けて運転する。終夜運転はせず、終電の繰り下げを行う空港線では、わずか4回しか見ることができない。
「沿線の方が多いといっても慣れない駅止まりだし、次の列車は最終電車だから、案内には気をつけないと」。ホームで案内する駅係員は、上下列車から乗り換えるお客様の流れを気にしながら、案内放送を重ねた。
穴守稲荷駅に着くと、列車は回送として羽田空港国内線ターミナルへ向かっていった。降りたお客様は、都心のイベントに出かけ自宅へお帰りになる沿線にお住まいのお客様と、穴守稲荷神社へ向かうお客様が半々くらいだろうか。速足で街へと向かっていく。
28分後の2時40分には、穴守稲荷駅からの上り最終となる電車が到着し、10名ほどのお客様を乗せて出発した。あくる朝の一番電車まで、空港線はつかの間の眠りにつく。
普段と違う夜も「いつもどおり」を守る
本線の電車は、泉岳寺~横浜間で30分間隔の折り返し運転を行う。車内は、カップルで仲良く会話する姿や目を閉じてじっと目的地まで過ごす人、“あけおめ”メールに忙しく携帯電話を操作する人などさまざまだ。そんな終夜運転の電車をじっと見守る職員もいる。その一つが通信区だ。
信号機や踏切保安装置の設備を担当する通信区では、万一のトラブルや事故に備えて、普段から夜勤がある。大みそかであっても、いつもと変わらぬ同じ夜である。
挨拶をして、通信区に待機する班長に声をかける。「何も特に変わらないですよ。何もないのがいちばんですけど」。終夜運転のダイヤに目を落としながらそう話す脇には、ヘッドランプをつけたヘルメットが。万一トラブルがあればいつでも出動するという緊張感がみなぎっていた。
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