REIT市場が土壇場に、公的資金か合併再編か《不動産危機》

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 合併を促進する制度整備は急ピッチで進んでいる。1月23日に閣議決定された「2009年度税制改正の要綱」には、「負ののれん代の取扱い」などの措置が盛り込まれた。

たとえば吸収合併されるREITの評価が純資産を下回る場合、合併により差額が「負ののれん」として認識されるが、これはキャッシュ流入を伴わない利益。一方でREITでは、法人税免除のため利益の90%以上の分配が求められており、課税回避のために物件売却などでキャッシュ捻出を迫られるケースも生じる。税制改正では負ののれんを利益から控除する措置が講じられる。

初の合併が実現するためには、投資主(株主)にとって公平な合併比率の算出が求められるなど、実務上解決すべき課題は残る。だが、早稲田大学大学院の川口教授は「合併を進める制度上の障害はなくなった」と政策対応を評価する。

REIT復活を占う最初の試金石と目されるのが、4月7日に予定されているニューシティ・レジデンス投資法人による再生計画の提出だ。

大和総研REIT担当アナリストの鳥井裕史氏は「債権者の権利が毀損しない内容での再建となればクレジット市場の安定化につながる。反対に不動産のキャップレートが想定外に高ければ市場のセンチメントを一段と悪化させかねない」と予想する。また市場関係者の間では「新しいスポンサーの下でニューシティがさらなる再編の受け皿となるのでは」と読む向きもある。

ニューシティ決着後の焦点はパシフィックHD傘下の二つのREITの落ち着き先に移る。

住宅系の老舗、日本レジデンシャル投資法人の保有資産は「優良な物件が多い」(みずほ証券の石澤氏)。だがその一方で負債も約1700億円と多く、うち900億円が投資法人債。9月に60億円、10月には120億円と償還が控えているが、運用会社の高野剛社長は「借り入れ、物件売却だけでなく、デットデットスワップなどリストラクチャリング手法の組み合わせが考えられる」と語る。「おおむね5月末がメド」という国内外の複数候補からのスポンサー選定が注目される。

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