ローンスターが支援、REIT再生の高いハードル
J‐REITのニューシティ・レジデンス投資法人は7日、再生計画案を東京地方裁判所に提出。スポンサーとして米国系大手投資ファンドのローンスター・グループと契約したと発表した。昨年10月、住宅系REITの老舗であるニューシティは、資金繰りが行き詰まり民事再生法の適用を申請。J‐REIT初の経営破綻として、業界に大きな衝撃を与えた。
今後、ローンスターが60億円の第三者増資を引き受けて総投資口の68%分を取得し、公開買い付け(TOB)も実施。約1000億円の負債は賃貸収入を元手に今後5年間で全額返済する計画だ。ニューシティはローンスター選定の理由を「弁済条件など多面的に検討し、提案が最も優れていた」(執行役員の新井潤氏)と説明し、「民事再生での100%弁済は画期的」とも強調した。
計画実現への課題
だが、計画実現に向けていくつかの障害も予想される。まず、TOB価格の1口3万5000円は上場時の最終株価1万4200円を上回るが、破綻前決算時(2008年8月期)の1口当たり純資産46・7万円を大幅に下回る。このため5月の投資主総会で「投資家の反対など一波乱があるのでは」と見る向きもある。分割返済する債務弁済も、全体の約9割を5年後の2014年11月に支払うというもの。この計画に対し、債権者からは「全額弁済というよりも、期日の5年延長」と反発を招く可能性もある。
総会や債権者集会以外にも課題はある。ニューシティは今後、投資主への分配や新規の物件取得を控え、債務弁済に専念する。ただ、賃貸から得られるキャッシュは過去の実績を基にすると5年でせいぜい300億円程度。原資としては不足が大きい。また、担保権を有する債権者(別除権者)は同計画の枠組みにとらわれず債権回収が実行できる(総額174億円)。仮に別除権者が担保物件の売却に動けば、賃料収入の減少から再生計画に狂いが生じかねないだけに、この部分の協議も重要になる。
業界関係者はローンスターの出資について「彼らの読みはこの先3~4年でのREIT市場の反転。5年後までに市況が上向けば、負債の借り換えや再上場など打つ手はいくらでもあるとの見立てだろう」と分析する。ただ、市況反転のもくろみが外れると、債権者からは追加出資を迫られるリスクがある。
異例の全額弁済で再生を果たせるのか。今後は稼働率の低下などで住宅系REITが下降局面に向かうと予想される。東京スター銀行などの再生実績を誇るローンスターにとっても、ハードルは決して低くないだろう。
(水落隆博 =週刊東洋経済)
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