小説 ピカソの復讐 山元清則著

小説 ピカソの復讐 山元清則著

主人公は将来を嘱望される新進画家だったが、恩師の陰謀により盗作の濡れ衣を着せられて美大を追われる。絵筆を捨てた苦難の生活の果てに復讐を果たそうとする心の葛藤、画商として成功する中での復讐の顛末、そして一大美術プロジェクトへの挑戦という2部構成の長編小説である。

美術商の著者はこれまでに美術解説書などをものしているが、美術界への啓蒙という目的をより効果的に果たすには小説の形をとるのがよいと考えたという。美の世界にうごめくスキャンダル、さらに人間の弱さ、醜さを描くことで、逆に究極の美としての絵画の持つ力を浮き彫りにしようという狙いだろう。

もっとも前半部で成功裏に落着する復讐譚を、最後にもってきてもうひとひねりしたほうが余韻が残ったかもしれない。現代アートを含む絵画市場、絵画投資など美術界の実情が話の合間に織り込まれていて、おのずと知識が得られる仕掛けになっている。(純)

展望社 1575円

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非正規労働者が年末年始の待遇や病気休暇などについて正社員との格差是正を訴え、最高裁は格差は不合理で違法とする判決を出しました。一方で賞与や退職金についての格差是正はほぼ全面的に退ける判決も。非正規労働者の待遇は改善するのでしょうか。

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