イオンが覚悟の大量値下げ、専門店に「倣う」衣料品改革
だが、ライバルも同様に思い切った値下げに動いている。イトーヨーカ堂はイオンの「反省会」前日に、「過去最大級」と称して2600品目の一斉値下げを発表。衣料では当初3000円で販売予定だったワイシャツを、1490円と破格の値付けで売り出した。当然、値下げで単品当たりの利益は減るものの、販売量を増やし、「全体の売り上げを前年比で2%底上げする」(イトーヨーカ堂・幅野則幸衣料事業部長)という薄利多売戦略をとる。大幅な価格引き下げにコスト面での手当ては完全には追いついていないが、「今後は製造拠点や原材料をより吟味し、値下げしても利益が出る体制が可能」(幅野部長)と話す。同じく西友も、同じ商品で同社よりも安い他社チラシを持ち込めば、その値段に下げる制度を導入。3月からは1470円ジーンズを発売するなど低価格戦略を鮮明化しており、価格競争はいっそう過熱している。
ワンストップの利点で専門店に勝てるか
だが「摸倣」から始めて一定の成果を上げられても、専門店から客を奪い返すのは簡単ではない。昨年、ユニクロが大ヒットさせた機能性肌着「ヒートテック」の販売枚数は2800万枚。一方、イオンの同様の商品「ヒートファクト」は280万枚止まり。ユニクロに代表されるSPA(製造小売業)は企画段階から販売までの一貫工程に強みがあり、改良を重ねた商品が売り場で消費者に支持されている。イオンの販売力との差は歴然としている。
イオンでは従業員教育を強化し、ベビーアドバイザーなどの社内資格取得者を積極的に活用する方針。今後は、商品説明能力の向上も図る。
さらにGMSという業態を、不況時の味方につけたいとする声もある。「衣・食・住用品の買い物がワンストップで買えるGMSは経済合理性が高い。可処分所得が低下する今こそ、GMSの強さを生かせる好機」(岡内祐一郎執行役)。
今回、イオンは反省を踏まえた出発だが、足元はユニクロ以外の衣料専門店でも苦戦を強いられるほど環境は厳しい。低価格路線を打ち出し、継続的な成果をどこまで上げられるのか。「打つべき手はこの上期中に打ち、遅くとも下期には効果を100%発揮させる」(岡内執行役)とするが、厳しい価格競争が繰り広げられる中で、衣料品改革の真価が問われるのはこれからだ。
(鈴木良英、福井 純 撮影:田所千代美 =週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら