北海道新幹線、こうすれば地元は活性化する

政治学者が語る新幹線開業の「正負の効果」

観光政策を考える際に配慮しなければならない点がある。それは「観光客は、地元住民の『日常』の空間に『非日常』を求めて訪れている」という点である。観光産業が成り立っているような場所に住む多くの住民は、観光客が「非日常」を感じられるように、よそ行きの顔で「おもてなし」することが必要である。

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城下町の風情が今も残る金沢の東茶屋街

それは地元住民からすると、「日常」の中に観光が溶け込んでいるからである。しかし、世界遺産に登録されると、にわかに観光客が押し寄せる。そんな地域では「非日常」を感じられる「おもてなし」がなかなか対応できない。

観光客向けの「非日常」志向と「日常」に暮らす地元住民が感じるわずらわしさの間で、あつれきが発生するからである。

たとえば、京都や金沢で行われている景観規制を思い浮かべて欲しい。家屋の色彩や高さなどを規制する景観規制は、観光客からみれば「街並みが保全されている」とプラスの評価になる。

しかし、そこに住む住民にとっては、自ら住む家屋のあり方さえも自由にできない制約として横たわる。観光のために景観を守るというのは「言うは易く行うは難し」の政策である。行政はそうした「非日常」と「日常」のあつれきに意識を向けて観光政策を考える必要がある。

新幹線は「黒船」、恩恵は限られる

北陸新幹線の金沢や九州新幹線の熊本など、新幹線開業効果を考える際に我々は開業後の観光で成功している都市に目を向けがちである。しかし、新幹線には通勤・通学圏を拡大させ、支店網の再編を促すといった、沿線住民の「日常」を変える力のあることを忘れてはならない。

新幹線の開業は、沿線地域の企業にとってビジネスチャンスにつながる一方で、県外資本が地元に進出しやすくなるというピンチを呼び込むことでもある。新幹線開業は徐々に地域の風景を変え、その過程で新たな人材が登場するきっかけにもなる。それは、時代の変革を促した幕末の「黒船襲来」にたとえることもできるだろう。

新幹線の存在が地域の「日常」を再編していく過程で、当該地域の中には「勝ち組」「負け組」が生まれていく。つまり新幹線開業の恩恵は、住民にあまねく行き渡る訳ではない。恩恵を受けた人・場所と、開業によってかえって損をした人・場所が生じるのである。

たとえば、新幹線の新駅と既存の中心市街地が離れているような場合、中心市街地の飲食店が「負け組」になる可能性は極めて高い。開業によってビジネスマンの日帰り出張が増えると、飲食を新幹線の新駅近くで済ませるようになるからである。

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