あなたの部下が指示どおり仕事をしない理由

指示の仕方が間違っている場合が多い

このような、いわば「勘と経験と度胸の成功法則」を脱するために、2015年初旬、350社の中堅・中小企業に勤める2800名を対象に大規模なアンケート調査を行いました。企業内人材育成に関する研究の第一人者、東京大学の中原淳准教授との共同の調査研究です。

この調査の目的を一言で表現するのであれば、「国内の99.7%を占める中小企業における人材開発のメカニズムを、科学的アプローチで解き明かそう」というものです。大規模な調査と統計的な解析を基に、「たまたまその人だから成功できた成功法則」ではなく、万人が活用できる成功法則を見いだそうという研究を行ったのです。

調査結果からは「うまく部下を動かす上司像」が浮かび上がってきました。部下をうまく動かしている上司は、部下に仕事を任せる際にきちんと目標咀嚼(そしゃく)を行っているようなのです。「目標咀嚼」は聞きなれない表現ですが、わかりやすく言い換えると「『なぜ、その仕事を行わなければならないか』をわかりやすく説明する」という行動です。

具体的には「自分の職場の戦略や目標を、優先順位を提示したうえで、部下にかみくだいて説明できる」「自分の職場の戦略や目標を細分化し、部下に仕事を与えることができる」「現場の状況を把握し、職場の戦略や目標を的確に微修正できる」といったものです。これまで語られていた「コミュニケーションのひと工夫、つまり大事な“ひと手間”」は、この「仕事を任せる際の目標咀嚼」だったのです。

目標咀嚼を怠ってしまうと・・・

では、この目標咀嚼を怠ったやり取りのイメージと、その結果を見ていきましょう。もしかしたら、皆さんもこんな仕事の任せ方をしてしまっているかもしれません。

上司:Aさん、ちょっといい?
部下A:はい、大丈夫です。
上司:実は来月から、部門横断のコストダウンプロジェクトが始まるんだ。で、そこにAさんに参加してほしいんだ。
部下A:え!? 私が…ですか?
上司:そう。すべての部門から1人出すことになったから、うちからはAさんを推薦しといたよ。詳しいことは、総務部長からの連絡でわかると思うから。部門の代表として、バシッとよろしくね!
部下A:え……。あ、はい。……ちなみに、どんな内容なんですか?
上司:え? それは、また総務部長から聞いてよ。とにかく、部門の代表だから、しっかりよろしくね。
部下A:はい……わかりました。
上司:うん、じゃあよろしく。
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