サイバー藤田社長「海外進出はそう甘くない」 次は何が来るのか、ネット業界の展望は?
――最近は、日本のベンチャーも海外展開を積極化している印象がある。
そんなに甘くないと思う。海外進出が簡単だと考えているとしたら、隣の芝生が青く見えているだけ。きちんと地に足がつかないまま海外展開を進めている企業が多い。
日本から出ていくのであれば、よっぽどユニークじゃないと。海外で成功したといった評価を得たいことが先に立っているように感じる。「フィンテック」や「アドテク」みたいに、「海外進出」が一種のバズワード(流行りの言葉)になっていて、それ自体が目的化しているのではないか。
流行に乗っておくと得だよね、というくらいの感覚で冷静な経営者なら良いけれど、本気でそれだと思ってしまうと危ない。
――今後の潮流は?
ウーバー(タクシー配車サービス)やエアビーアンドビー(個人宅の宿泊を仲介する)のように、モノやサービスを共有して活用するシェアリングエコノミー(共有型経済)が勢いを増している。
こうしたサービスはリアルのところもきちんとやる必要がある。ある程度の経験値がないと運用できないし、ロビー活動のようなものまで絡んでくると、大学生のような若者にはなかなか手に負えない。個人間の不動産取引なども話題だが、ネットだけで完結するものは少なくなっている。
シェアリングエコノミーやIoT(モノのインターネット)はこれからどんどん増えるだろう。ただ、事業にするのは、ネットビジネスの経験値やサービスを作り込む技術的な部分で大企業だけでは無理だし、態勢的な面ではネット企業だけでも難しい。そういう意味で、大企業とネット企業の業務提携が進むと思う。
動画は「今やるべき」と判断
――サイバーエージェントも大企業と手を組んでいる。
動画配信の「Abema(アベマ) TV」でテレビ朝日と、音楽配信の「AWA」でエイベックス・グループ・ホールディングスと合弁会社を作ったが、これは必然的なタッグだ。
ネットのサービスは、コンテンツだけでは成り立たなくて、ユーザビリティ(使い勝手)の磨き上げや、ユーザーがコミュニティを作るような設計が重要になる。
そして、本当にユーザビリティの良いサービスを作ろうと思ったら、大企業がどこかに外注すればできるということはなくて、ネット企業としっかりと手を組むことが必要になる。
というのは、ユーザビリティについて主体性を持って考え抜かないと良い物ができないし、出した後も使いやすいように改善を続けないとならないからだ。
2015年にリリースしたAWAに続いて、注力するアベマTVは、まず2月にアプリで試験放送を始めて4月に本格開始する予定だ。これまでも動画コンテンツやメディアに注目し、事業でも試行錯誤して経験を積んできたが、スマホの性能や通信環境、自分も含めたユーザーの感覚を総合して、「今だ」という判断を下した。
(撮影:今井康一)
(週刊東洋経済12月26日、1月2日合併号掲載のインタビューに加筆)
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