「月給が賞与と比べ異様に少ない人」は要注意 会社が「あなたの万一の保障」を削っている?

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会社員の場合、社会保険料は給与の約15%にも相当しますので、結構な負担です。保険料は「労使折半」ですから、会社側の負担も社員と同様になりますが、「できれば払いたくない」と考える経営者もいます。ここに目を付けたのが「社会保険料削減ビジネス」です。

社会保険料は、標準報酬月額に対して等級ごとの保険料率が掛けられます。等級は健康保険料、厚生年金保険料それぞれに上限があり、一定の金額以上になると社会保険料は上がりません。賞与も同様で、保険料の対象となる金額に上限が設けられています。例えば、給与50万円で年収600万円だとすると、年間で負担する健康保険と厚生年金の保険料は合計89万8800円です。会社も同額の負担です(40歳以上、東京都の協会けんぽの場合。雇用保険の負担率は低いので、ここでは考慮しません)。

では、同じ年収600万円でも、給与10万円で、夏・冬のボーナス240万円ずつとすれば、どうなるでしょうか? 労使それぞれが年間で負担する保険料は年間56万8105円になります。年収は同じですが、支払うべき社会保険料がなんと労使ともに33万円以上も安くできるのです。

保険料の「上限」を意識した巧妙なトリック

こんなトリックができるのは、賞与にかかる社会保険料に上限が設けられているからです。健康保険は年間573万円、厚生年金は月間150万円が上限ですから、今回のお客様のケースでは240万円の賞与に対する厚生年金保険料は150万円でいいことになり、その分社会保険料を減らせるのです。

実際、このお客様は、年間の賞与が12カ月に分割され、毎月の給与と一緒に振り込まれていました。銀行口座から給与の引き出しを行っていた奥様は、「なぜ会社からの振り込みが2つに分かれるのか」と不思議に思ったものの、そういうものなのだろうとご自身を納得させていたのだそうです。

筆者はお客様に対し、「年収600万でも、給与額は50万円ではなく10万円で、差額は賞与として支払われている」と伝えました。したがって、万が一、コロナに感染した場合の傷病手当金は、お客様が自覚していた「給与50万円を基にした1日あたり1万1000円」ではなく、「10万円を基にした2000円となっている」と話しました。

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