自分たちの常識が実は世間の非常識だった、なんてことはどの業界でもよくある話。学校現場でも、従来のやり方に固執してしまい、働き方や授業の改革が進まないケースも多いのではないだろうか。そこで本連載は、「ココを変えればもっと学校現場がよくなるかも!」といった提案を、田中光夫先生の“フリーランスティーチャー”ならではの視点でお届けする。第15回のテーマは、「ゲームトラブル」。ヘビーゲーマーの田中先生が考える、学校が取るべき対応とは?

トラブルの多いオンラインゲーム、入り口は「オフライン」

――スマホ所有の低年齢化やゲーム業界の盛り上がりなどを背景に、ゲームに夢中になる子どもが増えています。ゲームによるトラブルも多いといわれていますが、教員はどう対応すべきですか。

とくに小学校高学年くらいになるとオンラインゲームのトラブルが増え、教員がそれに対応して疲弊するという話も聞きます。トラブルに発展する経緯は、だいたい似ています。

オンラインゲームはネットを介したゲームなので「ネトゲ」とも呼ばれていますが、多くの場合、実はネット接続を介さない「オフライン状態」でもストーリーを楽しめます。なので、始めた頃はオフラインでストーリーを進めることに熱中します。

ゲームに慣れてくると、学校の中で同じゲームをしている子と攻略の話題で盛り上がるようになります。「あの攻略サイト、知ってる?」「あのユーチューバーのゲーム配信、面白いよな!」と、共通の興味・関心事なので、話が尽きることはありません。

そしてある日、「オンラインで一緒にやってみない?」という話になります。現実とは異なる世界で、チャットや音声通話で会話しながら冒険を進めるのはとても楽しいです。協力しながらミッションをクリアしていく達成感は、現実で得られるものとは一味も二味も違います。しかもどんどんアップデートされるので終わりがない。僕自身、ネトゲ廃人になるほどはまりましたのでよくわかります。

ゲームの3大トラブルは「暴言・あおり・課金」の加速

こうしてのめり込む中でトラブルが起こってくるのですが、主に3つの傾向が見られます。

1つ目は、「文字によるチャットや音声によるボイスチャットを通じた暴言の過激化」。最初は仲良くゲームしていた仲間と、しだいにささいなことでけんかが生じ、暴言を吐くようになるのです。

「ログイン時間を合わせろよ! パーティー組めないじゃん!」「一緒にパーティーを組んでも、お前の装備は貧弱すぎて足手まといだ!」「その装備をくれないと、今後一緒に遊ばないぞ」「お前のせいでチーム戦に負けたじゃないか。責任取れよ!」

また、「うわ、雑魚! 弱っ!」とバカにするような言葉を相手に浴びせる「あおり行為」も起こりやすい。実際、学校で物静かだった子が、オンラインゲームを始めてから言動が荒くなったという事例を見聞きします。

オンラインゲームを始めてから言動が荒くなった事例はよくあるという
(イラスト:田中氏提供)

2つ目は、「ゲーム内での競争の激化による、勝ち負けへの執着からくるトラブル」。あおり行為が加速し、仮想空間と実生活を切り離せない子が出てきています。ゲームの中の「あおる・あおられる」という関係性が、地続きで学校生活に侵入してくるのを僕も何度か見てきました。