デジタルアーツの「未成年者の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」(2020年4月)によると、小中高校生(調査対象10〜18歳)の89.8%と約9割がSNSを利用している。利用率が高いのはLINEやYouTubeだが、TwitterやInstagram、TikTokの人気も高い。子どものSNS利用によるトラブルも年々増えている状態だ。ここでは小中高校生から大学生までのSNS利用の実態とトラブル、対策までを紹介したい。
小学生の問題はYouTube、LINE、TikTokに集約される
近年、スマートフォン(以下、スマホ)の所持年齢が低年齢化し、スマホを利用する小学生も増えてきた。しかし、大人とは違って小学生は、スマホだけでなくタブレットやゲーム機、Wi-Fiにしかつながらない中古のスマホなど、さまざまな端末からインターネットを利用しているのが特徴だ。
小学生における問題は、主に「YouTubeの長時間視聴」「LINEでの人間関係のトラブル」「TikTok関係トラブル」に集約される。YouTubeだけは自由に見られるようになっている家庭が多く、「止めても一日中見続けてやめない」という相談はよく寄せられる。
また、LINEのやり取りにおける友人間のトラブルは、どの学校でも必ずあるものの1つだ。まだ小学生は文章力が高くないため、相手を怒らせるようなメッセージを送ってしまい仲たがいをしたり、仲間外れやいじめなどにつながることがある。
最近増えてきたのが、TikTokによるトラブルだ。女子児童の間で自撮り動画投稿が流行しており、友達の映った動画を勝手に投稿したとか、コメント欄に悪口を書かれたとか、嫌がらせで通報されたとか、さまざまなトラブルが報告されている。
始めに利用時間やしてはいけないことなどをルールとして決めてから使わせることで、多くのトラブルは減らせるのではないだろうか。
・スマホを持つ小学生が増えている
・タブレット、ゲーム機など、さまざまな端末からインターネットを利用
・YouTubeの長時間視聴、LINEでの人間関係のトラブル、TikTokでのトラブルが多い
依存やリベンジポルノが増える中学生、高校生
中学生に上がるとスマホを持つ生徒が一気に増え、それにつれてSNSの利用が増加する。中学生でTwitterやInstagramの利用が増え、投稿する生徒も増える。また、高校生になるとほぼすべての生徒がSNSを利用するようになる。
中高生になると、自撮り写真や動画を投稿することが当たり前となり、トラブルも増えてしまう。許可なく写真や動画をSNSに公開される問題に加えて、匿名やなりすましアカウントでの誹謗中傷、冒頭でご紹介したようにSNSで知り合った相手に誘拐されるという事件も出てくる。
また中高生になると、リベンジポルノ事件も起きる。「交際時に撮影していた彼女の裸の写真を、別れた後に周囲に送ったことで学校中に広まってしまい、彼女が不登校になってしまった」と聞いた。先生たちが、写真を所持している生徒たちにスマホを持ってこさせて写真を削除させた。ところが、彼女が卒業した後に入学したその妹が、同級生に「これお前の姉ちゃんだろう」と写真を見せられたという。一度広まった写真は、このように残り続けてしまうのだ。
学業不振や家族・友人関係などのトラブルから、オンラインゲームに逃避してしまい、昼夜逆転の生活になったり不登校になる生徒も増えてくる。SNSやゲームの利用時間が増え、交際範囲が広がる一方で、はまってしまい抜け出せない生徒が目立つようになる。
中高生になるとペアレンタルコントロール機能などを嫌ったり、保護者の言うことも聞かなくなりがちだ。しかしリテラシーが突然高くなるわけではないので、ルールを決めたり、周囲の大人による利用の見守りがとても大切だ。
・中学生でスマホを持つ生徒が一気に増える
・中学生になるとSNSを利用する生徒が多数派となり、利用するSNSの種類と投稿も増える
・高校生になると、ほとんどの生徒がSNSを利用するようになる
・自撮り写真や動画を投稿することが当たり前となりトラブルも増える
・SNSの利用時間が増え、はまって抜け出せない生徒が目立つようになる
・ペアレンタルコントロール機能を嫌ったり、保護者の言うことを聞かなくなりがち
詐欺のターゲットになり、バイトテロを起こす大学生
大学生にとって、SNSは必須のツールだ。入学前から大学用のアカウントを作成し、同じ大学に入学する同級生たちと交流、情報交換をする。しかし、同時にSNSで事件や被害にも巻き込まれている。
持続化給付金不正受給での大学生の大量逮捕が相次いだが、SNSはこの勧誘にも使われた。「先輩からLINEで『税理士がついているから大丈夫。誰でももらえるから』と言われて、書類までそろえた。コロナ禍でバイトが激減していたから、手数料を渡しても数十万円もらえるのは魅力的だった」とある大学生は語る。「家族に話して止められたため送らなかったが、話さなければ自分も送っていたと思う」。このような不正受給は、半グレ組織によって組織的に勧誘が行われたという。
Twitterなどでは大学生をターゲットとした受け子・出し子などの闇バイト募集、高額就活セミナー、投資詐欺・情報ビジネスなどの「モノなしマルチ商法」であふれている。そもそも大学生は、クレジットカードも作成でき、借金もできる年齢のため、詐欺のターゲットにされやすい。そのうえSNSで検索することが多く、一人暮らしをしていて保護者に相談しないケースも多く、リスクが高まる。
TwitterやInstagramなどのSNSへの不適切投稿で炎上事件を起こす例も多い。バイト先で撮影した不適切な写真や動画を投稿して炎上するのが、いわゆるバイトテロだ。たとえ24時間で消えるInstagramのストーリーズなどでも不適切なものは投稿しないような指導が必要だ。
・SNSは必須のツールであると同時に、事件や被害に巻き込まれるケースも出てくる
・クレジットカードの作成、借金もできる年齢のため詐欺のターゲットにされやすい
・一人暮らしをしていて保護者に相談しないケースも多く、リスクが高まる
・不適切投稿で炎上事件を起こす例も多い
リテラシーを育て相談できる関係性を大切に
SNSは、子どもたちにとってコミュニケーションのための必須のツールとなっており、禁止することは難しい。また、禁止しても隠れて使われれば、トラブルが起きたときに相談してもらえず問題が大きくなってしまう可能性がある。利用することを前提に、リスクや正しい使い方を指導するべきだろう。
ただし小学生に限っては、多くのサービスが13歳以上を対象としたサービスのため、保護者が管理しながら利用させるか、管理できないなら利用させないことも必要だ。フィルタリングサービスやペアレンタルコントロール機能のほか、多くのサービスで公開範囲を限定したり、メッセージできる相手を限定するなどの安全に使うための対策が用意されているので、子どもに理由を説明したうえで設定しておくといいだろう。
筆者は多くの学校で講演をしているが、大学生や専門学校生でも社会面のニュースは読んでいないと聞くことが多い。TwitterやInstagramによるバイトテロが続いた理由は、彼らがニュースを見ず、炎上するリスクを知らなかったためだ。
しかし、知っていることで防げる被害は多い。周囲の大人は、事件などが起きるたびに、そのサービスでどのようなリスクがあるのか、どんな事件が起きているのかを子どもに伝えてほしい。子どもの使い方について普段から会話するようにしたうえで、いざというときに相談してもらえる関係性を築いておきたい。
・SNSは、子どもたちにとって必須のツールになっていて禁止するのは難しい
・小学生は管理しながら利用させるか、管理できないなら利用させない選択も
・知っていることで防げる被害は多いため、日頃から子どもにリスクを伝える
・いざというときに相談してもらえる関係性を築いておく
(注記のない写真はiStock)