0.001秒短縮に命を賭けた男たちの儲ける執念 高頻度取引に支配される金融市場のリスク
株や為替などの金融取引に関わるテクノロジーの進化が止まらない。
とりわけ、現在は運用プログラムである「アルゴリズム取引」、あるいは数ミリ秒単位の「高頻度取引」「高速取引」が市場を支配しており、金融マーケットは人類の手の届かないところで制御不能な領域に達しつつある。
高頻度取引が織りなす金融市場のロマン?
そんな中で、先ごろ封切られた映画『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』が、注目を集めている。
2011年にスタートしたニューヨーク証券取引所(以下、NYSE)とカンザス州のデータセンター間1600キロメートルを、光回線でつなぐ専用回線敷設プロジェクトの物語を映画化したものだ。ハミングバード(ハチドリ)が1回羽ばたく際の時間「0.001秒」を短縮するためのプロジェクトである。
この物語の舞台となっている2011年当時は、株式取引が「高頻度取引」に大きくシフトしていた頃で、ほかの投資家よりわずかでも高速売買を可能にしたものが、利益をすべて独占できる夢を追いかけたストーリーだ。実在する通信プロバイダー「スプレッド・ネットワーク社」が、NYSEからシカゴのデータセンターを一直線の光回線で結ぶことで、0.001秒の短縮を狙った顛末を描いた。
同社の無謀とも言える光ファイバー敷設計画は、作家のマイケル・ルイスが『フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち』(文藝春秋刊)として描き、世の中に幅広く高頻度取引が知られることとなった。その結果、アメリカや欧州、日本でもこの高頻度取引業者を規制する動きが広まった。
今や、金融商品の中でも大きなシェアを持つ「ETF(Exchange Traded Funds:上場投資信託)」も高頻度取引の産物と言われ、金融マーケットは人間同士の売買取引よりも、コンピューターによるアルゴリズム取引と高頻度取引が圧倒的に高いシェアを持っている。
にもかかわらず、ほとんどその実態は知られていない。映画『ハミングバード・プロジェクト』が公開されたのを機に、現在の金融マーケットが抱えるリスクを考えてみたい。
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