日本人に「脱・現金払い」は本当に定着するか

世界に後れを取るインフラ整備と意識

世界中でキャッシュレス化が進む中で、日本だけが取り残されるわけにはいかない。観光立国を標榜する日本にとって、現金決済に慣れない外国人観光客が大量に押し寄せる日もそう遠くないからだ。

しかし、人手不足が深刻化している日本こそが、キャッシュレス化することで省力化を図り、生産性を高める手段として活用すべき技術だと言われる。実際に、「現金お断り」の店舗実験では、1店舗当たり月額20万円程度の節約になるというシミュレーションもある。

経済産業省は、将来的にはキャッシュレス決済の比率を80%まで高めたいという方針も打ち出している。そんな現実の中で、日本のキャッシュレス化は本当に進むのか、考えてみたい。

「現金」に代わって登場する「QRコード」決済

日本で電子マネーが発達しなかった背景には、いくつかの理由がある。

①偽札の流通が少ない
②現金を持ち歩いても安全な治安
③ATM設置数が多く簡単に現金を引き出せる環境
④手数料がかかるクレジットカードが小規模店舗などで嫌厭
⑤電子マネーがポイントカードと融合し顧客を囲い込むスタイルとなり、業種や業態を超えて幅広く使える電子マネーが普及しなかった

最近になって、交通系の電子マネーが改札口以外でも使えるようになりつつあるが、それでもまだまだ普及のスピードは遅い。こうした現実に、経済産業省も重い腰を上げて、キャッシュレス化推進の制度作りに乗り出した。

たとえば、今月発足した第4次安倍改造内閣にも入閣している世耕弘成経産相が今年2月、自らICタグを使った無人コンビニの実証実験に取り組むようにアピール。4月には「キャッシュレス・ビジョン」を発表し、日本のキャッシュレス化比率を2025年に40%に上昇させ、将来的には80%を目指すと発表した。

さらに、「キャッシュレス推進協議会」を立ち上げて、QRコードを使った決済基盤を提供する会社に補助金を出す、あるいは中小の小売店には決済額に応じて優遇税制も適用することなどが考えられている。また、2019年10月1日から実施される消費税率アップに合わせて、キャッシュレス決済にポイントを付与する仕組みを政府サイドで検討していると、報道されている。

政府が、なぜいまになってキャッシュレス化を貴重な税金を使ってまで推進する側に立ったのか。その背景には、大きく分けて3つの意味がある。

第1の理由は、世界的なフィンテックの動きの中で、日本がもともと得意とする電子マネーの分野で後れを取るわけにはいかないからだ。

たとえば、ちょっと前まで電子マネー決済のツールといえば、非接触型ICカードを使った技術開発だったわけだが、スマホが登場し、非接触型ICカードを使わなくても、簡単に決済ができるようになった。

第2の理由は、少子高齢化=人口減少社会の影響による人手不足の解消だ。前述したように、最近では「現金お断り店舗」の実験店舗もスタートしている。慢性的な人手不足というニーズに応えるために、無人のコンビニや電子マネーオンリーの飲食店や販売店が増えている。政府も、人口減少対策への一環としてにわかに注目しはじめたと言っていい。

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