セルジオ越後「日本人は現実が見えていない」

「日本代表は強い」はファンの錯覚でしかない

――日本では国民がそれを求めている、という見方もできますか?

2014年のブラジル・ワールドカップで日本代表は1勝も挙げられないまま、グループリーグで敗退しました。選手たちは「優勝を狙う」と大口をたたいていたんですよ。それなのに、彼らが帰国したとき、約2000人のファンが空港に駆けつけ、選手たちを拍手で出迎えた。これには、逆に選手が驚いたそうです。ラグビー・ワールドカップの後もそうでした。「よくやった」のオンパレードでしたが、ほかでもない選手たちがグループステージ敗退に満足していなかった。

勝っても負けても褒めるのは選手に対して失礼だし、そのうちに選手は勝負に対して鈍感になり、競争心を失って、頑張らなくなってしまいます。日本代表はすでに、そんな状態になりつつあります。ワールドカップで負けて、アジアカップで負けて、ワールドカップ予選でもホームでUAEに負け、それでもブーイングをされないわけですから、選手たちの競争心は落ちる一方です。

移籍話には2つのタイプがある

――代表戦はイベントで、選手たちを間近で見られて、応援で盛り上がれれば、日本代表が勝とうが負けようが満足、ということなのかもしれません。

そもそも「日本代表は強い」と錯覚しているファンが多いんです。確かに数年前に比べ、海外のチームに所属する選手、いわゆる「海外組」は増えています。でも、本田圭佑、宇佐美貴史、香川真司、吉田麻也、乾貴士、岡崎慎司と、軒並み出場機会が限られている状況です。

まず、移籍には2つのタイプがあることを知っておかなければなりません。選手が大活躍して、買う側が乗り込んできて「うちに来てください」と言われる移籍と、こちらから「こういう選手がいます。取ってくれませんか」と売り込んでいく移籍です。

前者は本物の移籍で、移籍金を支払ってまで獲得したいということ。一方、後者は大抵の場合、移籍金はゼロ。つまり、タダなら検討してもいいというレベルです。さらに、実力だけでは契約までに至らないから、試合の放映権という“お土産”をつけることもあります。そういう場合は、エージェントのおかげで移籍できるということを知っておく必要があります。

――そういった裏の事情は、あまり報道されませんね。

芸能界で事務所がゴリ押ししてスーパーアイドルを作れるように、スポーツにおいてもヒーローは作れるんですよ。スポーツニュースであたかも海外で活躍しているかのように報道して、CMにもたくさん出て。でも、作りもののスーパースターだから、すぐにメッキが剥がれてしまう。そうやって視聴者がだまされていたことに気づいたとき、急激に冷え込んでいくんです。

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