米産牛肉の輸入規制緩和へ、食品安全委が安全評価、緩和時期の遅れに業界は恨み節
内閣府の食品安全委員会は9月5日、第74回プリオン専門調査会でBSE(牛海綿状脳症)のリスク評価について議論を交わし、米国産牛肉の輸入規制を、現行の生後「20カ月齢以下」から「30カ月齢以下」に緩和した場合でも「人への健康影響はあったとしても非常に小さく無視できる」とする評価案をとりまとめた。この結果、早ければ年内にも、米国産牛肉の輸入規制が大幅に緩和され、ほぼ全面的に米国産牛肉の輸入が解禁される。
この輸入規制はそもそも2000年代に相次いだBSE問題に端を発する。日本では01年9月に国内で最初のBSE感染牛が発見され、その後米国で03年12月にBSE感染牛が確認されたことを受けて輸入禁止措置を実施。05年12月に生後20カ月齢以下の牛肉に限って輸入再開を認め、現在に至るまでこの規制は続いていた。
しかし、現在では米国など各国で、発生源とされる飼料の規制や脳、脊髄といった危険部位の除去などの対策法も確立されており、世界のBSE発生件数は1992年の3.7万件をピークに11年には29件にまで減少している。
こうした流れを受けて11年12月、厚生労働省より健康影響評価の要請を受けた食品安全委は、規制を緩和した際のリスクについて調査を開始。食肉加工業者や外食業界は、「輸入規制が30カ月齢以下に緩和されれば、米国産牛の9割ほどが輸入対象になる」と規制緩和に大きな期待を寄せていた。
この当時、業界内では「早ければ12年5月の連休明け、遅くとも8月ごろには規制緩和になるのではないか」との観測が出回っていたものの、専門調査会での議論が「各国のデータや先行研究など科学的知見に基づいて議論をしており時間がかかった」(酒井健夫・専門調査会座長、写真)。
緩和の時期が業界の観測からずれたことで、今夏、関連業界は大きな混乱に陥った。規制緩和による供給拡大で価格が値下がりすることを見越し、日本の食肉卸などは流通在庫を削減した。また米国の肥肉業者は、日本の現行の規制に対応した生産を絞り込んでいた。このため、「供給が2割程度減った」(国内の大手食肉卸)状態になってしまったのだ。