北朝鮮「新年の辞」、経済傾注宣言で狙うもの 「強盛国家建設の最全盛期を切り開こう」
対外的な言及は相対的に少なかったが、一方で目立ったのは韓国との統一問題に関する内容だ。北朝鮮問題が専門で慶應義塾大学の礒﨑敦仁准教授は「踏み込んだ発言が目立った2015年ほどではないが、統一問題に関する言及が長く、金第1書記の関心の高さが表れている」と指摘する。
「南朝鮮(韓国)当局は昨年の北南高位級緊急接触の合意精神を大事に見なし、それに逆行したり対話の雰囲気を害する行為をしてはならない」と新年の辞では述べており、今後も韓国との対話には全面的に拒否しないという姿勢を示している。
今回の演説をどう読むべきか。以下は慶應義塾大学の礒﨑准教授による解説だ。
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金正恩第1書記による新年の辞は、今年で4回目となり、最高領導者としての関心事が如実に表れるようになった。これまでの『労働新聞』論調からは、金正恩第1書記の関心事として、教育、スポーツ、中間管理職、青少年、家庭、乗り物、世界の趨勢といったものが抽出できたが、これらはいずれも新年の辞でも触れられている。
たとえば、戦車からジェットコースターまで自ら乗車した画像を公開してきた金正恩第1書記は、今年の新年の辞において、「空ではわれわれがつくった飛行機が飛び、地下ではわれわれがつくった地下鉄電車が走る誇らしい現実」について述べている。
先代の指導者に対する自信も見せる
今年5月初めには36年ぶりとなる朝鮮労働党大会が開催されることになっているが、新年の辞でも何度もそのことに触れられている。そこでは、「偉大な首領様達(金日成主席、金正日総書記)の賢明な領導の下にわが党が革命と建設で成し遂げた成果を矜持高く総括し、わが革命の最終勝利を早めるための煌びやかな設計図を広げることになる」と表現されるが、具体的に何が発表されるかは読み取りづらい。党創建70周年に向けて人々を経済建設に動員した2015年に続き、明確な目標設定として第7回党大会の開催を機能させたいのであろう。
「遺訓」については2回触れられているものの、先代指導者に対する直接的言及は昨年よりもさらに減少した。金正恩政権は、遺訓離れによって自らの独自性を発揮しようとした段階を脱し、自らを先代指導者と同列に位置付けうるとの自信を得たものと考えられる。
「最高位級会談を開かない理由はない」「われわれ式社会主義を南朝鮮側に強要しないし、これまでも強要したことはない」などと踏み込んだ発言が目立った2015年ほどではないが、引き続き統一問題に関する言及が長文で、金正恩第1書記の関心の高さが表れている。今年は、北朝鮮の「体制変化」や「制度統一」といった韓国内の議論に反発したり、対外関係や貿易に関してほとんど言及がないなど、守りの姿勢が垣間見られる。
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