シャープの命運を握る鴻海と二つの銀行
もともと市場の信頼が厚かったシャープは、調達資金の約7割を直接金融で賄ってきた。短期の資金調達手段であるコマーシャルペーパー(CP)が6月末時点で約3600億円もある。財務状況の悪化でCPの新規発行は難しく、借り換えるには銀行の協力が必要だ。
「CPは企業の信用力の高い時期には血液が循環するように回っていく。だが財務にストレスがかかる時期は、中長期の借入金を中心に間接金融の比率を高めるやり方が現実的だ」(みずほ証券の寺澤聡子シニアクレジットアナリスト)
来年9月には約2000億円の新株予約権付社債(転換社債=CB)が償還期限を迎える。転換価格2531円と転換は絶望的。9月にはこのCBも短期有利子負債に移行し、長短バランスはさらに悪化する。
主要銀行に支援を要請
2日の会見では、足の短いCP返済と13年9月のCB償還の手当てに質問は集中した。奥田隆司社長は、「金融機関にバックアップ体制の検討をお願いしている」と繰り返し強調せざるをえなかった。
今のところみずほは、「三菱東京UFJ銀行とも協力し、引き続き支援を継続する」としている。だが、直接金融分を賄うには多額の融資積み増しが必要なため、「応じるにはシャープが具体的な再建計画を提示することが不可欠」(関係者)。
その再建計画のカギを握っているのが鴻海だ。
今年3月の提携発表時点では、シャープは鴻海から計1300億円を調達できるはずだった。うち660億円は郭台銘董事長個人によるシャープ堺工場への出資で、7月に払い込みが完了している。これにより堺工場はシャープと鴻海による共同運営となり、鴻海は堺工場で生産する液晶パネルの引き取りを開始した。