話題騒然だった前作『第9地区』(2009年)は、ドキュメンタリー・タッチの語り口と、まるで未来のビデオでも見せられているかのようなリアリティが圧巻だった。本作は再び2154年という近未来での人類の運命を描いているが、そのリアルで緻密な世界観にはただただ魅せられるばかりだ。
ブロムカンプ監督(脚本も担当)が、本作で啓示する近未来は、富裕層と貧困層とに二分化された世界だ。ひと握りの富裕層だけは、天空に浮かぶスペース・コロニー“エリジウム”(天国!?)で贅を尽くした生活を送り、大多数の貧困層は、荒廃しきった地球(地獄!?)で苦難の生活を強いられていた。幼き日から“エリジウム”で暮らすことを夢見ていたスラム街出身のマックス(マット・デイモン!)は、ある日ロボット組み立て工場で不慮の事故に巻き込まれ、余命5日と宣告されてしまう。生き延びるためには、“エリジウム”に完備する最新医療ポッドでの治療が絶対条件だった。かくしてマックスはレジスタンス軍と組み、難攻不落の“エリジウム”を目指すのだが……。
決死の潜入に挑むマックスを迎え撃つのは、冷酷非情な女防衛長官デラコート。(恐らく悪役には初挑戦の)ジョディ・フォスターが好演している。マックスは潜入の際、瀕死の身に直接強化スーツを装着するのだが、ボルトを打ち込んだり、これは相当痛そうだ(苦笑)。デラコートの命でマックスとバトルすることになる秘密工作員クルーガーが日本刀(?)や手裏剣もどきを駆使して対抗するあたりはご愛嬌。「前作に比べると期待外れ」という批判コメントもあるようだが、娯楽SFアクションと割り切って鑑賞すれば、十分楽しめる作品だと思う。
(文:たかみひろし/音楽・映像プロデューサー、『モノ・マガジン』2014年6月16日号掲載記事を一部加筆・修正)
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