ウーバー運転手のかなり曖昧な「雇用形態」 米国で台頭する「ギグ・エコノミー」の代償

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スーパーボウルの当日や天候が悪い日など、注文が殺到したときに問題が起きたのだ。たくさんの人が食べ物を配達してもらいたいと思っているとき、独立契約者という形態だとドライバーを招集するのが困難だと、マンチェリーの事業担当副社長クリス・フレドリクソンは言う。

それに対して社員という雇用形態なら、信頼性が高く、知識豊富な労働力を確保することができ、一定のサービス水準が維持され、より一貫したスケジューリングが可能になる。マンチェリーの幹部は、20~30%のコスト増は元を取ってもお釣りがくると話す。

労働者の雇用形態を最近転換したオンデマンドサービス企業は多く、マンチェリーはその一例に過ぎない。

ビジネスモデルを変えた買い物代行Instacart

買い物代行のインスタカート(Instacart)は、2012年にサービスを開始し、「ウーバーの食料品版」として知られるようになった。ドライバーはインスタカートのアプリを起動し、オーダーが入ると顧客が希望するスーパーマーケットに行って買い物をし、自宅まで届ける。

だが、売り上げが会社の想定を超える一方で、サービスの質はそれを下回った。配達する商品の漏れや、傷ものがあるケースが多発したのだ。さらに、ドライバーに対して、彼らの自宅からスーパー、顧客の家までの交通費を支払うのはかなり非効率的だった。

インスタカートは今年に入り、ビジネスモデルの見直しを進めている。大手のスーパーマーケットと提携し、買い物を担当する「ショッパー」たちを各店舗に配属、注文に素早く対応できるようになった。ショッパーは社員として雇用され、トレーニングを受けるし、勤務態度によって評価もされる。

ショッパーは、注文を受けた商品をドライバーに渡す。ドライバーは独立契約者のままだ。トレーニングや指導を受けないドライバーに求められるのは、運転免許と犯罪歴がないこと、そして街中の道に精通していることのみだ。

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