東日本大震災被災住民の窮状を見過ごす行政、ボランティアの支援が命綱
震災発生後、国や地方自治体は災害救助法に基づいて避難所の設置や食料・衣類の配給など被災者への生活支援に乗り出した。だが、仮設住宅の完成とともに支援を大幅に縮小した。「仮設住宅への入居は自立への第一歩」というのがその理由だが、宮城県では行政が仮設住宅の寒さ対策を怠ったことが原因で、多くの入居者が苦難を強いられた。
前出の牧沢住宅は、幹線道路から徒歩で40分もかかる山間部にある。入居した56世帯のうち一人暮らしの高齢者は36人。入居者は抽選で決められたため、顔見知りも少なかった。行政から支援物資のこたつやストーブが届いたのは、多くの住民が購入した後だった。
牧沢住宅を訪問して「事態が深刻だと感じた」と語るのは、キャンナス東北の岸田広子看護師だ。震災後、石巻市を拠点に仮設住宅への訪問活動を続けてきた岸田さんは、村上さんからの要請で昨年12月末に牧沢住宅を訪問。大勢の一人暮らしの高齢者が引きこもり状態になっているのを目の当たりにした。
岸田さんは現在、1週間に1度の割合で牧沢住宅の高齢者宅の個別訪問を継続。医療支援活動にも岩手県一関市に住む看護師の菊地優子さんらとともに参加している。
解決に動かない気仙沼市
仮設住宅では、行政が硬直的であるために解決が困難な問題が少なくない。気仙沼市内の「面瀬ふれあい住宅」(14戸)は談話室設置の目安である10戸を上回るものの、「近くに公民館がある」との理由で仮設住宅には談話室が併設されていない。ただ、公民館は予約を取れるとは限らず、支援物資の保管もできない。そのため、仮設住宅の自治会では「空き部屋を談話室として開放してほしい」と市に要請しているが、「待機者の入居が優先される」(気仙沼市社会福祉事務所)として実現していない。敷地内への建設についても、「予算がない」(市住宅課)との理由で進展がない。